電子出版のデスクトップ28

本を読む場所


 本を読む場所はどこだろうか?このテーマは電子出版を考える上でたいへん重要なポイントである。いろいろな人に聞いてみるとさまざまな読書の場所が浮かび上がる。
 通勤電車の中、喫茶店、ソファー、寝床といったところが定番だろう。中には風呂場でという人もいる。実にさまざまだが、茶の間のテーブルという人はいても、仕事机に向かってという人は少数派だ。デスクトップパソコンは読書には向いていないことだけはたしかなようである。
 ここでいう読書の場所とは小説に代表される読み物系の読書環境である。読書の環境も場合によってさまざまだ。仕事や学習のために引く本。辞書、リファレンスなどは携帯型の読書端末で読むことは少ないだろう。でも同じ仕事のために読む本でも、知識吸収型の本は電車の中で読めることが必要だ。そして、その知識を後で検索して確認したりするのがデスクトップPCの上になる。
 学習という場面でも電車の中では記憶のために簡単端末で読み、本格的に学習する場面はキーボードと大きな画面という組み合わせだろう。
 しかしどの場合をとらえても小説など読み物系と同様に携帯型端末は重要な要素になってくる。本を読みたいさまざまな環境に適応するためにはどうしても軽く小さい端末が欲しいのである。
 読書専用の携帯端末も構想されてはいるが、PDAとの複合機という姿がとりあえずは有望だろう。PDAを「カバンの中のさまざまな荷物、手帳や住所録、ウォークマンなどをひとつにまとめること」だと定義すれば、カバンの中の必須アイテムとして文庫本は欠かせないではないか。
 カバンの中の最近の必須アイテムである携帯電話も音声を伝えるものから文字や画像を送るものに変化してきた。するとやはりこれもPDAの方向にまとまってしまう可能性が高い。
 ネットワーク接続が出来、本を含めたさまざまなコンテンツを引き出せる端末、そんなPDAの姿が現実の日程の中に登場しはじめている。
 そんな携帯端末を支える重要技術のひとつ液晶についても最近の進歩は飛躍的だ。解像度も一気に200PPIクラスのものが商品化され始めている。「読みやすい日本語を実現するには高い解像度が必要だ」とこの連載の始めのころ書いたのだが、その夢物語がもうすぐそこにやってきているらしい。楽しみなことである。
 ところでそういった商品の登場を待てない私はノートパソコンで毎日読書三昧を送っている。わたしの読書の場所は昔から寝床である。枕元にアルコールの入ったコップ、そして1冊の本、いや最近は1台のノートパソコン。これが私の読書スタイルだ。
 寝っころがって本を読む場合はノートパソコンのように自立してくれるものは意外と便利である。枕を少し高くして横を向いて本を読む。本を支える必要がないから腕がしびれたりしない。ページめくりもたまにキーをタンと叩くだけだ。
 最近はそんな環境で長編の時代小説にはまっている。おおよそ快適な環境なのだがひとつ困ったことがでてきた。それは24時間いつでもどこでも続編が手に入ってしまうことだ。
 何巻もある長編小説を一気に読めるはずもない。1冊分が読み終わったらおとなしく寝ればよいのだが、巻の終りはたいてい気がもめる展開。おもわず寝床でモバイル。電子書店に飛んで行き次の巻をダウンロードしてしまう。
 おかげで毎日、睡眠不足。本好きとしてはありがたいやら辛いやらなのである。
『情報管理』Vol.44 No.6 Sept. 2001 より転載

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