電子出版のデスクトップ12

Sorry Japanese Only!

―日本語を読みやすくする(1)―


 最近は鳴りをひそめたが、かつてホームページでは英語を使うのが常識だという不思議な論議があった。たしかにインターネットは世界規模のネットワークであり世界中からアクセスできるから英語もあったほうがベターだろう。しかし世界中に発信する以前に自分の身の回りの人とのコミュニケーションを大切にして欲しいものだ。
 日本人が日本人向けに書いたホームページなのに書かれているのは英語だけという珍奇なページもいまだに散見する。日本人を対象にものを書くときには日本語を使うのが良いと思うがどんなものであろうか。こんなページは"Sorry English Only"と書いておいてもらいたい。
 愚痴はともかくWeb上に日本語コンテンツがたくさんあることは日本人にはありがたいことだ。紙の出版は長期低迷を続けている。しかし、商売であるかどうかは別として、Webのページも立派な出版物。その意味では日本の出版活動はインターネットで飛躍的に規模が拡大したといっても良いと思う。
 でもその日本語。はたして美しく読みやすく表記できているだろうか。これが本題である。
 「電子出版をやってます」というと例外なく「でも目が疲れるでしょう」と言われる。どうも「ディスプレイ=目が疲れる」という公式が出来あがっているらしい。
 少なくとも私には事実は逆である。最近は紙の本を読むとどうも目が疲れる。個人的な事情で申し訳ないが少々老眼気味なのである。目と紙の間が30センチより近づくと辛い。文庫などの小さな活字はどうしても目を近づけてしまうから読むのが面倒になってしまう。
 その点ディスプレイは良い。画面に30センチより近づくことはなかなか困難だし、おまけに文字は小学生の本のように大きい。文字を大きくしたからといって、いわゆる「大字版」のように大きくなって扱いづらくなるわけでもない。ということで個人的にはディスプレイの方に軍配があがるのである。
 しかし「ディスプレイ=目が疲れる」論も間違っているわけではない。先程の日本語のホームページ。これが実に読みづらい代物である。文字が小さい場合でもブラウザの設定を変えて大きくしてしまえば済むが、それでも読みづらさは変らない。長大な文章などはWeb上ではとうてい読む気がしてこない。
 Webなんてそんなものだと思い込んでいる方はアルファベットで書かれたページに行かれると良い。そして日本語フォントを使わずに適当な欧文フォントを使用して見て欲しい。今まで感じてきた画面の感じが一変するはずである。(IEなら[表示]→[エンコード]→[西ヨーロッパ言語] NNなら[表示]→[文字コードセット]→[欧米]でフォントが切り替わるはずだ)
 日本語のWebの画面は平板でごちゃごちゃと文字が並んでいる感じがする。それに対して欧文フォントで表示した欧文のページは力強くメリハリのある文字。きれいに揃えられた行。これは読めますね〜という感じがすると思う。
 この差は一体何なのだろうか?欧米のホームページには文字だけというページも多い。対して日本のホームページは画像が多用されている。そんな傾向もこの差によるものかも知れない。
 もしかしたら日本語はディスプレイに向いていないのか?紙面が尽きたので読みづらい原因を探るのは次号以降としたいが、たしかにこの読みづらさ思わず“Sory! Japanese Only!”といいたくなるのである。
(以下次号)
『情報管理』Vol.42 No.12 Mar. 2000 より転載

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