ICTの普及を背景にした近年の著作権法改正によって、出版・電子出版の保護の強化と利用の拡大を生じさせようとしています。著作権法政策の変化によって出版・電子出版はどのように変容するかを考えるために、松田政行弁護士が「出版・電子出版著作権総講義」と題して講演を実施いたします。
今年度は、その第1回「著作権法の底流の変化」を9月17日(金)に、第2回「出版・電子出版に起こる今後の変化」を10月1日(金)に開催します。
講師:松田政行弁護士
レジュメ:20211001レジュメ
配布資料:20211001_JEPAセミナー資料
■出版・電子出版著作権総講義 第2回
「出版・電子出版界に起こる今後の変化」
(1) 国立国会図書館における利用
今年度の著作権法改正によって国立国会図書館の送信サービスが許容されることになった。登録利用者に対する絶版等資料の直接送信と補償金の支払いによって著作物を利用者に一部送信する事業である。補償金は、指定管理団体によって一括徴収・配分がなされることに成る。この状況は、いずれも米国Google Booksによる書籍コンテンツの利用を超えた状況と見ることができる。その先に見える国立国会図書館の姿は何か。出版・電子出版にどのように影響するか。
(2) 拡大集中許諾制度の導入
次に来る著作権法の大きな流れは、拡大集中許諾制度の導入ではなかろうか。この制度は、現在の著作権等管理事業者が管理している著作権等が信託譲渡又は委任を受けた著作物・著作権に限るところをこの信託・委任がない著作物・著作権に拡大するということである。これによって、アウトサイダーの権利処理が可能にするということである。権利者不明、所在不明の権利者に許諾を得なくとも利用が可能になるため著作物の流通が決定的に促進されると共に新規コンテンツの創作に大きく貢献することになる。本セミナー1で示した利用へのシフトと利用の対価を制度的に担保しようというものになる。
(3) 利用へのシフトによる管理団体による権利処理のジャスティス
利用へのシフトは、権利者不明、所在不明の著作物の利用を含むことになる。すでにこの現象は、授業目的公衆送信補償金の管理に表れている。著作権法は、あらかじめこの補償金の分配ができない部分を折り込んで徴収した補償金の一定の割合につき配分資金から権利者に共通して有益となる事業への支出をしなければならないとしている。政省令によりこの割合は20%と定められているのである。共通目的事業という。この資金は、徴収する補償金によることになるが、毎年度5~6億円になるという予想もある。この配分不能分の予定額を著作権者等の共通の目的に支出することをもって、ラフ・ジャスティスとして社会的承認が得られなければならない。いかなる支出が予定されるのであろうか。ラフであってジャスティスにかなうところとしなければならない。
この共通目的事業的な補償金、使用料等の一部事業支出は、上記(1)、(2)にも生じる。更に著作権等管理事業であって配分できない資金が10年の留保によって生じることにもなる。セミナー参加者にこれらの毎年生じる「共通基金」をどう使うかを考えてもらいたい。
■開催概要
日時:2021年10月1日(金)16:00~17:30
料金:どなたでも無料
会場:オンライン Youtube Live(定員ナシ)またはZoom(100名)
主催:日本電子出版協会(JEPA)