2021年9月17日 JEPA Webセミナー「出版・電子出版著作権総講義 第1回」

2021.09.16

ICTの普及を背景にした近年の著作権法改正によって、出版・電子出版の保護の強化と利用の拡大を生じさせようとしています。著作権法政策の変化によって出版・電子出版はどのように変容するかを考えるために、松田政行弁護士が「出版・電子出版著作権総講義」と題して講演を実施いたします。今年度は、その第1回「著作権法の底流の変化」を9月17日(金)に、第2回「出版・電子出版に起こる今後の変化」を10月1日(金)に開催します。

講師:松田政行弁護士

講演資料:20210917_松田弁護士資料

■出版・電子出版著作権総講義 第1回
2021年9月17日■「著作権法の底流の変化」

(1) 30年改正法・令和2年の諸法
 本セミナーで取りまとめることとした範囲は、平成30年著作権法改正法と令和2年の著作権法改正関連諸法である。これらの条文の解説ではなく、底流にある著作権法政策の変化である。特に出版・電子出版の視点において論ずる。

(2) 柔軟な権利制限規定の導入
 柔軟な権利制限規定の導入によって3種の産業政策的要請を踏まえ、この3種を3段階の権利制限規定に見事に整理した。特に著作物の思想又は感情を享受することがない著作物の利用に関しては利用の自由を確保したという程の改正を行った。

(3) 授業目的公衆送信補償金制度の導入
 授業目的公衆送信補償金制度の導入は、授業目的の公衆送信の利用を著作権者への補償金の支払いを要件に許容するものである。35条1項は、授業目的公衆送信を権利制限の対象として、著作権者がこの制限規定による差止請求権を喪失する代わりに公衆送信を行う教育機関の設置者に対し補償金を請求できることとした。

(4) 令和2年法の著作権法改正関連諸法による改正
 30年、令和2年改正は、後戻りができない著作権法の性質を変える大きな流れを示しているように思われる。両改正は、著作権のインターネット上の権利を確実にしつつも、著作物の利用の諸場面において著作権者の利益と利用者の行為による社会経済的利益の促進を調整して柔軟に利用の可否を決定しうるという新しい著作権法を示している。

(5) 軽微利用と著作者の利益(もう一つの柔軟な権利制限規定)
 2回の改正において、著作権と利用との調整を柔軟に行う方法が見えてきた。この方法に共通して使われる法技術、法概念があるように思われる。小さな変化のように見えるが、大きく機能するのではないかと考えているので、ここに示しておく。それは「軽微利用」と「(但書的)著作権者の利益を不当に害する場合」である。

■開催概要
日時:2021年9月17日(金)16:00~17:30
料金:どなたでも無料
会場:オンライン Youtube Live(定員ナシ)またはZoom(100名)
主催:日本電子出版協会(JEPA)