2014/5/28 「電子出版物の不正コピープログラム摘発に関する日本電子出版協会の見解」

2014.05.28

 

2014/05/28 
一般社団法人 日本電子出版協会
 

 2014年2月に電子出版物を不正コピーするプログラムを製造販売したとして横浜市のソフトウェア開発会社(インターナル)が摘発され(コミスケ事件)、その後に不正競争防止法で起訴された件に関し、一般社団法人 日本電子出版協会(会長:関戸雅男(株式会社 研究社 代表取締役社長)、所在地:東京都千代田区三崎町2-9-2、ホームページ:https://www.jepa.or.jp、略称:JEPA)は、意見を述べます。

 弊協会は、電子出版物を提供する出版社や新聞社、電子出版物を配信する電子書店などの配信事業者、著作物の保護技術(DRM)などの配信技術やシステムを提供するソフト会社や印刷会社、電機メーカなどの会員で構成されています。今回の事件で、電子出版物を不正コピーされた電子書店の多くは弊協会の会員社であり、電子書店にDRM技術を提供していたのも弊協会の会員社です。

 弊協会が、これら会員社から事情聴取を行ったところ、

 1.電子出版物を提供する出版社からクレームがあり、採用しているDRMを強める改良を依頼したり、その他の対処をせざるを得なくなり、費用がかかった。
 2.価格を安く設定してあるレンタルコンテンツが永久保存ができることで、出版社や著者との出品交渉が難しくなり、営業妨害になった。
 3.DRMを提供していた会社では、顧客の電子書店からのクレームがあったので、専任の担当者を置いての対応に追われ、費用がかかった。

という結果が出ました。

 今回の事件の電子出版物を不正コピーするプログラムは、Windows標準の機能である画面キャプチャーが動作しないように仕組んであるDRMを回避するプログラムと、連続して画面キャプチャーして一冊の書籍に仕上げるプログラムから成り立っていると思われます。電子出版物を配信する電子書店などの配信事業者は、著者との約束で配信方法を設定していますが、それが不当な方法で侵害されると配信業者として対応が必要となり、実際に多額の費用や手間がかかりました。DRMはコピー防止対策ですが、その費用を純良な読者から頂くことでもあります。DRMをどんどん強化してゆくのは、配信事業者側の開発負荷が重くなると同時に、読者にとっては使いにくくなり、電子出版普及のために大きな妨げになります。

 弊協会としては、事業者が適切に施したコピー防止策を違法に解除するようなプログラムの配布は、電子出版の発展を阻害するものであり、本件について厳正に司法判断されることを希望します。電子出版物の不正なコピーを助長する行為は処罰されるのだという認識が広まれば、DRMがなくても電子出版物を配信することができるようになり、より使いやすい電子出版物を増やすことができます。

【ご参考】 写真でも音楽でも文章でも、デジタルデータになったもの(デジタルコンテンツ)は、コピーが簡単です。そこでDRMを使った配信では、デジタルコンテンツに暗号をかけ、暗号をかけたデジタルコンテンツと暗号の復号鍵を一緒に読者の持つ再生デバイス(PCソフトウェアこともある)に配信します。ただし、復号鍵は読者に判らないように再生デバイス内の秘密の場所に隠し、再生するときだけ再生デバイスが秘密裏にその復号鍵を使って元のデジタルコンテンツに復号して音楽や文章を再生します。アナログになった音楽や画面に表示される文章は、音で聞くか画面で見るだけで、生のデジタルデータは再生デバイスの外には出せないようになっています。そのことで、引用のためのコピーが出来なくなったり、音声読み上げが出来ない等の不都合も生じます。また、配信事業者ごとに暗号アルゴリズムが異なるので、購入したデバイスとあらかじめ登録したデバイスだけでしか読めないとか不便があります。書籍は音楽と異なり、読むのに集中力と時間が必要なことから、マンガと写真集、試験の参考書などを除き、収集の対象にはなりえません。技術系の電子出版物では、読者の利便性を重要視することが著者や出版社にとってもメリットになると考え、DRMの無い配信を行っている配信事業者も多く存在します。

■日本電子出版協会(JEPA)ついて https://www.jepa.or.jp/jepa/ 日本電子出版協会(Japan Electronic Publishing Association)は、1986年、出版社、書店、印刷会社、コンピュータ会社、ソフトウェア会社などを中心に、電子出版の普及啓蒙を目的として設立された。25年余に渡る活動の中には、CD-ROM仕様策定、Unicodeフォントの普及活動、書籍XML構造の策定、読書端末の普及促進、辞書データ形式、EPUB3日本語拡張仕様の策定などがある。会員社172社。

<報道関係お問い合わせ先> 日本電子出版協会 事務局 〒101-0061 千代田区三崎町2-9-2鶴屋総合ビル4F TEL 03-3556-5224 FAX 03-3556-5259 E-MAIL: sampei@jepa.or.jp 事務局長 三瓶 徹(さんぺい とおる)