知の大競争時代に出版界はどう対応すべきかJEPA事務局長 三瓶 徹
日本では、1年間に約8万点の書籍が出版されるが、同時に電子化される本は僅かである。日本は米国の1/25の狭い国だが、書店は2倍の15,000店もあり、再販制度のおかげで日本中のどこででも同じ価格で買える。しかも、米国に較べ安い。文字もレイアウトも装幀も綺麗な読み易い本が手に入る。従って、日本では読者が電子書籍を買う動機は少ない。紙の本は電気が無くても読める。本棚に並べれば飾りにもなる。多分千年後でも、そのままの形で読める。どう見ても電子書籍の分が悪い。 それでも、パソコンの普及すらままならない1986年に日本電子出版協会(以下、JEPA)は創立された。
CD-ROMの出現を機に、データベース系、リファレンス系、教育系電子出版の将来性に賭けた異端児が集まったのである。出版社、書店、印刷会社、電機メーカ、ソフトハウスなど業界を越えた会員社が委員会を作って、先端技術の普及、教育、業務促進、標準化などの活動を行ってきた。 それでも、この26年間で成功していると言えるのは、残念ながらコンピュータを生かせたサービスだけである。各種辞書や事典、法律系や医学系の情報サービスである。文献・記事を網羅的に集積したデータベースを構築し、求める情報が簡単容易に得られるように対応したサービスである。法律データベースがないと、法科大学院の学生も効率よく勉強ができない。霞が関の役人も法律が作れず仕事にならない。 また、東日本大震災で救援に駆けつけた医者が専門外の診察・治療をする際に、使い慣れた医療データベースが役にたっている。 漫画も電子出版に向いていると考えられていた。漫画本は分厚く、紙を大量に消費するので電子化すればエコにもなるからである。 しかし、ネットワークと再生できる機器類が登場するのに20年の歳月が掛ってしまった。しかも女性向けケータイ・コミックが大きな市場になることは、想像すらできなかった。 以降、電子出版において、解決すべき課題を紙面をお借りして述べたい。 ・・・・・・全文は、以下をご覧ください。
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