児童図書出版社に追い風が吹いています

2024.12.02

JEPA顧問 三瓶 徹

 ベビーブーマーの私の小学校時代は急激な子どもの増加で教室が足りず、新しい校舎が出来るまで同じ教室を午前は1年生、午後は2年生が使う二部授業で、本は廊下の壁に並んでいました。図書室?には戦後に発刊された新しい本がありましたが、点数は多くはありません。4年生の時、先生が宮沢賢治の「注文の多い料理店」をガリ版で刷って皆に読ませ、読書感想文を書かされた嫌な記憶が残っています。
 それでも、中学2年の時に学校図書館で読んだガモフ著「不思議の国のトムキンス」伏見康治訳は、私の将来を決めた本の1つですが、何故この本が学校図書館にあったのか今も不思議に思っています。もしかすると理研を辞めて来られた物理の先生が、自分の蔵書を忍ばせたのかもしれません。しかし学年が上がるに従って学校図書館には足が遠のき、自分の子供が小学校に入った時に存在を再認識した次第です。

 そんな影の薄い学校図書館ですが、今大きく変わりつつあります。
 2016年に文部科学省が示した学校図書館ガイドラインで、学校図書館は、従来からの読書指導の場である「読書センター」に加えて、「学習センター」「情報センター」としての機能が加わりました。

 同時に、図書館情報技術論や図書館情報資源概論など、ITに強い人材が期待できる学校司書のモデルカリキュラムも定められ、2017年度から大学での学校司書の養成が始まりました。履修者は毎年300~500名程度あると推定されます。2017年の学習指導要領では、「総則」で「学校図書館を計画的に利用しその機能の活用を図り、児童の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善に生かすと明記されました。

 第5次「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」の中でも、デジタル社会に対応した読書環境の整備として、電子書籍等の利用、学校図書館のDXを進める必要がある、としています。
 一方、経済対策でもあったGIGAスクール構想では、整備に直接大きな国費が投入されました。Google、Apple、MSの他、教育商社、多くの中小ソフトメーカも動きました。しかし1人1台のパソコンと便利なアプリが広がるだけでは本来自由に伸ばしたい才能が止まってしまう恐れもあります。多様な本物のコンテンツ(電子本)も一緒に子ども達に提供することで、子ども達一人ひとりに個別最適化され、創造性を育む教育の実現に向けて深化させることが出来るのではないでしょうか。

 そのためにも学校図書館にコンテンツ整備や人材整備に直接国費が投入されて、学校現場が利活用に思う存分取り組める状況を作りだされるはずです。児童図書出版社にも大きな出番が来ました。
 全国学校図書館協議会(全国SLA)の新理事長には読書バリアフリーの環境整備に取り組んで来られた専修大学文学部の野口武悟教授が就任されました。学校図書館でも新しい風が吹くことが期待されます。