ターニングポイント

2024.11.01

小学館  田中 敏隆

 出版業界は、というより世の中がターニングポイントを迎えている気がしている。
 なんとなく“10年ごとにターニングポイントが来ています”という、プレゼンをしていたことがあって、出版業界的には『ライバル』が増えたという点で、1995年の〝携帯元年(携帯電話の登録数が1000万台を超えた年〟が一つ。持ち出せるデバイスとして、メールやゲームが出来る〝元祖・電車の中での暇つぶし〟のライバルが一般的になった年である。

 その中で出版社がビジネスを出来る様になったのが、2005年頃。この年にKDDIがパケット通信料の定額制を始めて、着メロ・占いなどと共に、携帯コミックが売上を上げるようになった。デジタルコミックはスマートフォンが普及して、より大きなマーケットを作る事になる。
 2014年~15年にはdマガジンがスタートする。もしかするとこの辺りがサブスク元年ではないかと思っている。多少の無理があるかも知れないが、ビジネスの転機となったことは間違いないと感じている。
 2024年は、『AI』が大きな影響と衝撃とインパクトを出版業界だけでなく、マスコミ・エンターテイメント業界に与えている。

 ハイデルベルグが印刷機を作ったのが1450年ですから、タブレットとかスマートデバイスへのメディアチェンジが500年のぶりの出来事だと思って、それに対応してきましたが、『AI』への対応では、もしかすると我々はもっと基本に立ち戻ることが求められるのかもしれないと考えるようになりました。

 出版であれば、0から1を作ること、『ないものをつくる』こと、新しい発想、そこに自分たちの存在理由・存在価値を求めれば良いのではと考えています。
 『転機』への対応は、“守る”よりも“攻める”こと、“対応する”こと“対応する努力”が生き残る条件のように思っています。
 これからもターニングポイントは、望むと望まざるとに関わらずやってきます。逃げ隠れは出来ないので、前向きに進んで行くことが“生き残り”の条件では、と感じている今日この頃です。