テレビのニュースを見ていたら、「今年の全国学力テストで中学国語の正答率58.4%で過去最低」というニュースが流れてきた。興味を惹かれたのでネットで調べたところ、国語のテストは「話す・聞く」「読む」「書く」に分かれていて正答率は「読む」48.3%、「話す・聞く」59.1%、「書く」65.7%、「読む」は前年から約15ポイント下がる結果であった。
学習習慣についてのアンケートをテストと同時におこなっており、1日のゲーム時間1時間以上が小学校、中学校ともに7割強、SNSや動画の視聴時間1時間以上が小学校5割、中学校8割弱、3時間以上が小学校で2割強、中学校で3割強、利用時間が長い生徒ほど正答率が低い結果となった。一方、ゲームは「全くしない」、SNS・動画視聴は「30分より少ない」と回答した生徒は最も正答率が高い結果となった。文部科学省は「子どもたちには多様な文章に触れさせることが必要だ」とコメントを出したようだ。
我が家の子供たちをみても、ここ数年学校の教科書以外本や雑誌を購入していないし、読んでるところを見たことがなく、読むといえばスマホで電子コミックのみ、勉強も動画アプリというのが現状だ。書籍や雑誌をじっくり読むことの経験の減少が「読む」の正答率が低い一因。この学生世代の現状が、出版市場の縮小の一端であるといえる。
全国出版協会・出版科学研究所の発表によると2023年の紙と電子を合わせた「出版市場の推定販売金額」は1兆5963億円で前年比2.1%減で2年連続前年割れ、出版物売上のピークであった1996年は2兆6564億円だったので30年弱で1兆円減少したことになる。
紙の出版物市場は1兆612億円、書籍は6194億4.7%減、雑誌は4418億7.9%減。中でも週刊誌、コミックスが前年比10%をこえる大きな減少となっている。1996年時と比較すると、雑誌は1兆5633億円から三分の一以下の約4400億円、書籍は1兆931億円から44%減の約6200億円となった。電子出版市場は5351億円で6.7%増、5年前2018年からは倍以上215%の大幅増となっている。内訳は電子コミックが4830億円で前年比7.8%増、電子書籍は440億円で1.3%減、電子雑誌は81億円で8%減。紙の出版物だけでなく電子書籍、電子雑誌も減少しており、電子コミックだけが大幅増で出版市場全体の落ちを支えているのが現状となっている。
出版市場と同じで情報を文字で届ける新聞市場も大きく落ち込んでいる。2022年度総売上1兆3271億円、10年前の2012年は1兆9156億円、10年で約30%約6000億円の減少となっている。
インターネットの発展で人々の行動が変わっていくことは当然であり、その結果出版、新聞市場が縮小することは受け入れて対応していかなくてはならない。しかし紙であれ電子であれ母国語である「国語」の「読む」の点数が落ちていくことに、出版業界の一員として非常に危機感を覚える。