教科書が動画になってしまう日

2022.12.01

旺文社  生駒 大壱

NTTドコモ・モバイル社会研究所が行った「2021年一般向けモバイル動向調査」(スマホ・ケータイ所有者対象)によると、世代別の生活情報を得ているメディア利用率は、10~20代では「SNS」、30~40代は「Web・アプリ」、50~70代は「テレビ」がトップとなったとのこと。

この数値と各世代の人口を掛け合わせて集計してみると、驚くべき結果となった。「新聞を読んでいる人」の70%以上が50代以上。「TVを見ている人」の60%以上が50代以上。「Webやアプリ」は30代~60代で60%を占めていて、SNSは10代~30代で60%を占めているという結果だ。この推計は「生活情報を得ている」という人を「見ている・読んでいる」人と置き換えているし、スマホ・携帯所有対象ということもあるが、そんなに現実からかけ離れてはいないと思う。みなさんが薄々感じていたことが推計値として分かったということだ。

10代20代の若い人たちは、新聞もTVも「見ない」のだ。知りたいことがあれば、TwitterやInstagram、Youtubeで情報を得ている。ほとんど文字なんか読まないのだ。Webですら30代以上の世代のメディアになっている。

では、電子書籍はどうなのかインプレスの2021年調査によると電子書籍の利用率が一番高いのは、20代の55%(男女平均・無料有料含む)がトップで、30代の54%、10代の52%と続く。電子書籍は、若い人中心のメディアであり、利用されるコンテンツのほとんどはコミックだ。

若い人のメディアは、基本的にビジュアル中心、テキストは必要最低限だ。LINEで長い文章を打ち込んだだけでおじさん認定されてしまうという話もある。

最近わたしは、NHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を見た後で、その解説をアップしているYoutuberの動画をみている。これが意外に分かりやすく、解説として優れている。文字中心のブログだとちょっと面倒で読む気がおこらないものも動画にしてくれるとちょっと見てみようかなということになる。

このままで行くと、子供たちの教科書が動画になる日が来ないとも限らない。家で動画を見て学習して、学校では先生が補足の解説をしたり、演習やディスカッションといういわゆる反転学習が義務教育でも進んで行く可能性が高い。そのツールとして、動画の教科書が役に立つということだ。昭和の人間としては、すごい世の中になって来たなと思うばかりである。