図書館で読書専用端末に10,000冊入れて貸し出したら

2014.05.01

JEPA 事務局  三瓶 徹

 全国紙の記者が、家庭欄で電子書籍を取り上げたいと相談に来られた時のことです。
 「一般の方には読書専用端末やタブレットは敷居が高いし、お勧めはスマホですよね。」
 「そうなんですが、スマホでは長い文章は読まれせんね。一番読まれているのは漫画、それも女性向けのxx漫画なのですが。」
 「・・・・・・」
 「海外では小説が売れていますが、そちらもロマンス物が多いですね。」
 「・・・・・・」ため息
  一方、今日も新聞には英科学誌ネイチャー、米科学誌サイエンスに載せた論文の話題が載っていました。日本の研究者も、これらの評価の高い欧米の電子ジャーナルにアクセス出来なければ仕事にならないし、法律データベースがないと、法科大学院の学生も効率よく勉強ができない。霞が関の役人も法律が作れず仕事にならないし、医者も医療データベース無しでは仕事ができない。欧米の大学では学術書を含めて殆どが電子で読める。調べ物には確実に電子出版が適している。
 ところが小説となると本屋もコンビニもキオスクも多い日本では、電子書籍を選ぶ必然性が少ない。紙の本なら電気が無くても読める。電子書籍は書棚のスペースが不要で携帯性に優れている、と言っても体験する機会が無ければ実感できない。
 昨年、香川県「まんのう町立図書館」が読書専用端末「kobo Touch」を100台導入した。同端末100台には、1台ごとに異なる組み合わせで図書館お薦めの「青空文庫」50タイトルがダウンロードされており、利用者は読みたいタイトルが多く入った端末を借りることで、複数のタイトルを1台の端末で手軽に楽しむことができることが歌い文句だ。
 電子書店では、ほぼ1万タイトルの青空文庫が無料で読める。であれば、読書専用端末に50タイトルとケチなことは言わず1万タイトルでも入れて図書館で貸し出し、一般読者に体験させたらどうか。消費電力が少ないのでバッテリーは数週間持つ。当然、1万タイトルでは読みたい本が無い、という不満が出るだろう。不満が出た時のソリューションを複数用意しておくことが出版社のビジネスチャンスになると思うが。