電子書籍とコンテンツ ― JEPA雑感 ―
2013.04.01
日外アソシエーツ 山下 浩
小社は1986年のJEPA設立以来26年間ずっと協会に籍を置かせていただいております。この間の電子出版の流れにうまく乗れてこれたのかどうかは今日は横に置いておくことにします。
電子出版=CD-ROMだった当初から、ハード先行でコンテンツがついて行けなかった状況もあったのは否めませんが、ともあれ今21世紀に入って何度目かの「電子書籍元年」を迎えています。過去の空振りに終わった“元年”を見てみると、1.ハードの普及 2.コンテンツの充実 3.流通・販売(ストア)の確立 4.統一フォーマットの策定 のどれか(あるいは全て)が足りなかったのが原因だったと思います。今回の何度目かの正直ではこれらの必要条件がどうにかそろいそうな気配です。
現在の電子書籍として“売れる”コンテンツが、漫画であり、小説であり、読み物が中心であることは間違いありません。しかしながら出版をする側からすると、紙に印刷していては成り立たない出版物でも印刷製本費のかからない電子書籍出版の形でなら、というケースにも期待が大きいのではないでしょうか。少部数出版にならざるを得ない専門書・研究書出版、絶版本の復刊、復刻出版などがそうです。これらの電子書籍は残念ながらまだ成功事例が多くないというのが現状です。電子書籍もコンテンツあってのものです。こういうものが電子書籍のラインナップの1分野となっていってほしいと思っています。
Google、国立国会図書館による書籍の電子化事業など、フェアユースの議論も巻き込んでいろいろな動きがあります。優れたコンテンツを持っている出版社がもっと積極的にならなければこれらの大きな波に飲み込まれてしまう恐れもあります。大手の出版社はそれなりに新しい流れに即応する人も費用もかけられるのでしょうがそれは一握りです。中小出版社~一人出版社でもこの電子書籍の波に乗りたいと考えてはいるものの、ここでできる者とできない者が分かれてしまうのも現実です。
ここで勝手にJEPAの立ち位置を改めて考えてみます。世間に「電子書籍」「電子出版」を冠した団体がいくつかありますが、出版社/制作会社/流通・販売会社/ハードメーカー/ソフト会社 などあらゆる方面の関係団体が会員となっているという点、また狭い電子書籍ではなく広い電子出版をその対象としている点でもJEPAは、特異な団体だといえます。内部委員会にも「著作権委員会」「ビジネス研究委員会」「レファレンス委員会」「電子図書館委員会」「プラットホーム委員会」など他の団体にないものがあります。
良くも悪くも「緊デジ・補助金事業」というものが行われています。一年間で補助金を使ってしまわなければならない事業ですので、あらゆることが見切り発車の感は否めませんが、期限に追われてやむを得ず(無理矢理にでも)ことが進んだという状況でしょう。これによって初めて電子書籍をやってみたという出版社も多いと思います。会員社の中にも緊デジに関わった社が多くあるはずで、かくいう小社も“やってみた”という組です。今回は数冊の単行書の他に、明治期落語・講談速記雑誌『百花園』240冊のデジタル復刻というのも出しました(補助金対象書籍のルールからは外れているのですがどさくさに紛れてやらせていただきました)。
JEPAとして最新の技術、新しいシステムを追うことはもちろんですが、一方で入り口の敷居(レベル)をさげて、底辺の底上げをすることも電子出版をもっと本物の流れにするためには必要ではないでしょうか。電子出版につき、何か始めなくてはいけないけれど何をしていいかわからない、とりあえずJEPAに入会して…という会員社にも優しい目を向けてほしいと思います。電子出版/電子書籍をもっと一般的に普及させる中心にJEPAがあり、なるべく多くの関係会社が入会してくれ、増えた会費収入によってさらに会員社の手助けになるようなセミナー、ビジネスチャンス・プランなどを提供できればJEPA/会員社にとってなによりです。メジャーではない分野、売れ筋でないコンテンツにも目を向けて、たよれるJEPA、電子出版駆け込み寺というスタンスで、サジェッション・解決策を得られる場を提供できれば良いと思います。その後のビジネス実行段階の補助(資金的・技術的)などは、公的機構等の資金のあるところにお任せすれば良いのですから。
*とりとめもない、雑感独り言になってしましました。お許しください。