新潮社 柴田 静也
楽天koboがサービスを開始して、グーグルも7月に欧米でAndroid新OS Jelly Bean搭載の7インチタブレット「Google Nexus 7」を発売し、「Google Play」において本格的に電子書籍市場に参入意欲をしめしている。
日本においての電子書籍事業で、成功が見込めるのは、アマゾンが最有力だ。アマゾンはもともと紙の書籍を販売しており、たくさん読者を掴んでおり、紙の書籍に加えて、新たなバリエーションの1つとして電子書籍を販売するという流れをつくりやすい。いわばコンテンツを売る事業の拡張である。
かたや、同じプラットホームでも、例えばアップルの場合、iPodをはじめiPhoneやiPadといった原価率の低い端末で収益を上げることを目的にしており、コンテンツは端末を売るための客寄せパンダのような位置づけだ。昔はやった「フリー理論」で言えば、ただ同然でくばる「剃刀の本体」がコンテンツで、収益の根源である「替え刃」が端末だ。
各ICT企業は、ここ最近、電子書籍に注力する姿勢を強めているが、アップルとアマゾンの事例からもわかるように、その戦略は思惑によって、まったく異なる。この点は非常に興味深いし、電子書籍をビジネスとして飛翔させるには、独自戦略が不可欠であることを示しているのではないか。
このような独自戦略は米国企業に強くみられるのに対し、日本勢の戦略は曖昧模糊としてつかみどころがなく、出版デジタル機構をはじめ、どこで利益を得るのか判然としない。この点は大きな課題として認識されるべきだろう。