中小印刷会社が電子書籍で何ができるのか。
2011.07.01
ディキューブ 萩原 誠
ディキューブの親会社である萩原印刷は、1925年の創業以来86年間、出版印刷一筋に業務を行なってまいりました。活版印刷の時代より美しく読みやすい文字組版へのこだわりを追求しながら、時代の変遷とともに、ホットタイプ(活字)からコールドタイプ(写真植字)へ、そして電算植字からDTPシステムへと移行してきました。さらに出版社に特化したインターネットのWebサイト制作として、1998年に株式会社ディキューブを設立し、出版ビジネスを支援してきました。
電子書籍に関しても、昨年夏に出版社の電子書籍をサポートできるように、コンテンツメディア部を設立しました。中小印刷会社では、大きな投資をして電子書籍ビジネスに参入するのは難しいですが、まずは、DTPデータからシャープの「XMDF」やボイジャーの「ドットブック」の電子書籍データを作成して出版社に納品することから始めました。アップルのiPadが発売されてからは、App Storeで販売する電子書籍アプリの制作や販売代行を行っています。中小印刷会社ではありますが、時代の流れに少しずつ対応してきました。
電子書籍元年と言われた昨年頃より、中小の出版社から「電子書籍をやりたいのだけれど、どうやったらいいのか?」など、相談される場合があり、お話を伺う機会が増えてきました。中小の出版社の現状としては、会社として電子書籍に参入したいが、大手出版社と違って専門の部署がなく、編集や制作の業務と兼任しながら行わなければならない。また、電子書籍にかける費用も多くはかけられないというのが問題としてあるようです。そうした問題を少しでも解決できるように、情報提供をはじめとして出版社が手をかけられない部分をサポートできればと思っています。ただ、気になるのは印刷会社や電子書籍をビジネスとして行っているIT関連含めた会社に全てお任せする傾向があるように感じます。実際の作業は別として、事業展開・企画・制作内容などはやはり出版社が中心に考える方が今後を考えると良いかと思います。
話は少し変わりますが、東日本大震災の影響で流通の問題や印刷用インキ・紙の価格が上がるなどの問題が起きており、益々電子書籍が注目されるようになりました。震災後、多くの出版社がタイムリーに震災に関連する電子書籍を配信しました。これも電子書籍ならではの対応です。紙の書籍では、価格を無料や期間限定価格に設定するなどの施策は不可能ですし、タイムリーに現地にコンテンツを提供するのも難しいです。ちなみに弊社もある出版社の災害本を電子書籍で配信いたしました。少しでもお力になれたのではと思っております。
まだまだ色々な問題を抱える電子書籍ですが、伸びていくのは間違いのない話ですし、出版社も印刷会社も今後生き残っていくには避けて通れない道でもあります。もちろん、紙の書籍は、無くなるとは思いませんが電子書籍への対応は必要です。中小印刷会社では、できることは限られてきますが、電子書籍を盛り上げていく努力は必要かと思います。弊社も電子書籍の制作にとどまらず、販売やプロモーションのお手伝いもできるようにしていきたいと思っております。