紙で売れる本であれば電子でも必ず売れる時代はすぐそこにある
2011.01.01
研究社 関戸 雅男
昨年は電子書籍元年と一部でいわれました。元年とは「特筆すべき物事が始まった年」(『大辞林』)をのちに振り返っていうことばで、いまそれを言うのは本当はおかしいのですが、今度こそはそうであってほしいという願いが込められた表現と見ています。読書端末がしきりにマスメディアに紹介され、多くの人々の興味を引くところとなり、それに伴って電子書籍もようやく周知のものとなってきたようです。
電子出版にかかわる者として、私たちはいま何をしたらよいでしょうか。解決すべき課題はなおあるものの、電子書籍を入手して読むための環境は以前に比べれば格段にととのいつつあります。待たれているのは優良な電子書籍の品揃えです。端末を手にした人たちの期待に応える「本」をどんどん世に送り出す必要があります。
本を読むのは時間のかかる作業です。本が読まれるか否かは、それを読むことで楽しいあるいは有益な時間を過ごすことができるかどうかがポイントです。紙であるか電子であるかはもとより問題ではありません。読者がそれぞれの目的や嗜好に応じて決めることでしょう。紙で売れない本は電子でも売れないことは経験の教えるところですが、紙で売れる本であれば電子でも必ず売れる時代はすぐそこにあると信じて本作りに励むときと思います。