電子書籍、急がば回れ

2010.03.01

JEPA 事務局  三瓶 徹

 このアイデアを一緒に考えたのは当時の文春の藤田局長で、この話を6年前に、かの有名な2社を前にして皆で議論した記憶があります。
 電子書籍端末に小学生向けの推薦図書(文学全集など)を1,000冊まるごとバンドルするアイデアです。藤田さんのご意見では、昔はノーベル賞を貰うような大作家が子供向けの本を選んだそうです。今度も、最近の有力作家にお頼みして新しく選んでいただくのが良いということでした。とにかく、子供に本を読ませようという運動として作家の協力を得て、世界中から1,000冊ぐらいの「子供に読んでもらいたい本」を選んでいただき、原作家にも御協力いただき、1,000冊まるごとバンドルして、小さな子供のいる家庭に安く買ってもらったり、教育委員会に買上げてもらい小学校に置くのです。
 6年前の議論では、カイロのブックフェアが話題になりました。フランクフルトのブックフェアは有名ですが、カイロのブックフェアは期間も長いうえに一般の方が本を買いに来るのが特徴なのだそうです。町中には、子供たちが行けるような本屋が少ないうえに本の種類も少ないんだそうです。ブックフェアでも、もっぱら一般の方が買うのはコーラン。革張りのコーランからポケット版のコーランまで、多数のコーランがあり、これらを選んで買うのだそうです。コーランだけでなく、もっと沢山の面白い本があることを子供のうちから知ってもらう必要があります。これはアラビア語圏だけの話ではありません。世界中から1,000冊集めて多言語化して世界中の子供に配るのです。
 こんなことは、メーカも1社独占では困るので、2社以上がフォーマットを揃えて供給する必要があります。こうして日本に電子書籍端末があることを、世界中に知らしめ、子供の世界から徐々に大人向けに広げたら、というような話をしました。
 さて、この話は今でも通用します。そのためにも、日本だけが蚊帳の外にならないように、日本語の縦書き、子供が読めるようにルビを実装したEPUBフォーマットを、世界の端末に載せてもらわなければなりません。
 JEPAではIDPF(International Digital Publishing Forum)のEPUB仕様で許されている範囲の拡張を使って日本語組版をやり、日本語EPUB仕様としてIDPFおよび各メーカなどへの働きかけを行っていきます。