イースト 下川 和男
1月7日ラスベガスのCESで数十台の電子ペーパー端末が登場し、1月27日サンフランシスコでiPadが発表され、更に、マイクロソフトのスレート(石板)PC、グーグルAndroidを使った低価格の板型デバイス、インテルMoorestownを使ったデバイスなど、常時ネットに接続された「電子の板」が、今年、続々と登場することが明白になった。
iPadは書籍ビュアーiBooksとオンライン電子書店iBookstoreがウリ。アマゾンKindleストアー、グーグルEDITIONS、そしてiBookstoreと、米国の巨大IT企業が相次いで電子書籍の販売を開始し、日本もその波に飲み込まれそうだが、よく考えてみると多くの問題がある。
先ずはEPUB。縦書き、ルビなどの日本語画面組版をJEPAからEPUB推進団体IDPFに提案するのはこれからなので、書籍も雑誌も新聞も先ずは横書きになる。横書きの禁則もいつ頃、誰が実装するのやら。それに現状のEPUBはテキストにちょっと画像が入った程度の文章用。きれいなレイアウトは表現できない。
次にPDF。複雑なレイアウトを忠実に画面に表現させるPDFビュアーがiBooksに含まれていか不明。女性誌などは美しいレイアウトが必須である。
コミックに至っては、判型も異なるし、米国のIT企業に任せておいても、どんなビュアーが登場するのか見当もつかない。
そこで、ソニー電子ブック、パナソニック・シグマブック、ソニー・リブリエ、カシオやシャープの電子辞書、各社のケータイコミックなど、日本のハードウェア技術とコンテンツを組み合わせた実績をもとに、新しいデバイスを考えてみた。
業界団体というのは一般的にその業界を守るので保守的になるが、日本電子出版協会は「業際団体」。出版、印刷、流通、電子機器、ソフトウェアなど様々な業界の会社が集い、「電子出版を推進しよう」という革新的な団体なので、会員社がちょっと集まって話し合えば、以下のような「コンテンツに合わせた電子の板」がすぐにでも作れそう。
・漫画板
コミックを読むためのデバイス。7~9インチのカラー。見開きもあり。コミックの標準データ形式を決め、EPUB同様一般に公開。複数の汎用OS上でビュアーを開発。画像に多言語吹き出しレイヤーを追加。カラー化はオーサリング時に半自動で行う。
・雑誌板
PDFベースの雑誌専用デバイス。9~15インチのカラーでiPadも使えそう。出版社が保持している膨大なPDF資産をそのまま使えるようにして、目次ジャンプなどもオーサリング不要で自動認識。女性誌や情報誌は、広告連動が重要なのでECサーバと連携し、ポップアップで即ショッピング可能にする。ブラウザー起動のスクロール画面では買ってもらえない。
このサイズでPDFなら、表や図版、段組が多い「専門書板」としても使える。専門書の「叡智の海」構想も考慮し、PDFサーバ連携やファイル間リンクも実装したい。
・新聞板
これは家庭用と通勤用の2種類だが、デバイスの開発に少し時間がかかる。家庭用は新聞サイズの曲がるディスプレイ。通勤用は「雑誌板」を使うかB4判くらいのデバイス。B4は257×364mmなので17.5インチ。因みに新聞は25インチくらいになる。英国プラスチック・ロジック社や韓国LG社が頑張っているので、数年後には曲がったり、折れたりすると思う。
紙面イメージの忠実な再現が重要なので、こちらもPDF。しかし、新聞のラスター(イメージ)PDFではだめで、当然、テキストの真っ当なPDFを作らなければならない。
「辞書板」はキーボード付きだが電子辞書として製品化済み。辞書は上記3つの板の裏側に入り、Kindle同様、自由に本文の辞書引きができる。
KindleもiPadも当分は「欧文の書籍板」なので、ちょっと話でもしましょうか。>ALL