日立コンサルティング 岡山 将也
2009年もあと1ヶ月をきった。街の中はクリスマスキャンドルで埋め尽くされている。
4歳になった娘への今年のクリスマスプレゼントは、何にしようかと考えあぐねている。彼女は、絵本が大好きで、読み聞かせをしてあげると、次には覚えたてのフレーズを使って、勝手にストーリー展開を始める。「おぉ~子供って天才だ」と思う。娘もたくさんの本を読んで成長していくのだろうと想像すると、今からワクワクする。
私の友人にも娘がいる。しかし彼女は字が読めない。小さいから読めないのではなく、見えないから読めないのだ。
街にあふれる本は大多数が紙に印刷をした『見える字』で構成されている。この何万何千というたくさんの知恵の結晶を、単に見えないから読めないなんて、神様はひどすぎる。
「彼女が何か悪いことでもしたのだろうか」と私の友人はいう。返す言葉が見つからない。
会社の社会貢献活動の一環で、小学生の子供たちに「思いやりをカタチにしよう!」という ユニバーサルデザイン(UD)体験学習プログラムを実施するボランティアをしている。
(http://www.hitachi.co.jp/Int/skk/jirei/environment/universaldesign/index.html)
そもそも日立という会社は、モノを作る会社なので、誰でも使いやすい製品を提供する使命を持っている(実際にできているかというと疑問だが・・・)。
その活動中、子供たちにこんな質問をしてみた。
「もし君たちの目が見えなくて、本が読めなかったらどうする?」
ある男の子が「そんなの悲しい」といい、ある女の子が「誰かに読んでもらう」と言った。
「じゃ自分しかいない場合はどうするの?」と聞いてみたら、今度は別の女の子が 「音で聞く」といった。
他にも視力が悪くて文字がぼやけて見える場合は?という質問をしてみると、 「簡単だよ、大きくすればいいじゃん」と回答が来た。
なんだか誘導尋問になってしまったが、これらの言葉は子供たちから素直に出た言葉であり、この子供たちの心には、思いやりという心が育っているなぁと、うれしくなった。
目の見えない人だけでなく、手の使えない人や、白内障や緑内障などの病や高齢で視力が低下したり、色弱で色の区別が難しかったりする人が、世の中にはたくさんいる。昨年の「出版社のための出版UDセミナー2008」でも話に出たが、色弱の人は、全世界で血液型ABの男性の数と同じだけいるという。セミナーの講師に来てもらったカラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)の副理事長と先日会って話しをしていたら、「あのセミナー以来、出版社や印刷会社の方がCUDにとても興味を持って頂いている」とおっしゃっていた。
先日私も仕事中にびっくりしたことがある。たまたま仕事で色の話になり、たまたま持っていたCUDの資料を見せたところ、お客様自身が「この色、見えやすいです!実は私も色盲なんです」と言って場が和んだ。本当に身近に色弱の方がいることを実感した。
さて、2010年は国民読書年である。2008年6月6日に「国民読書年に関する決議」が、衆参両院全会一致で採択された。この国会決議では「文字・活字文化振興法」の制定・施行5周年にあたる2010年を「国民読書年」に制定し、政官民協力のもとで国を挙げてあらゆる努力を重ねることを宣言している。これにあわせて(財)文字・活字文化推進機構では、国民読書年のロゴとキャッチフレーズを発表した。キャッチフレーズは「じゃあ、読もう」。
健常者だけに向けられた「じゃあ、読もう」ではなく、どんな障害を持つ人たちにも「じゃあ、読もう」と言えるように、来年は少しでも前進したい。
「思いやりを少しでもカタチに」
参考資料:https://www.jepa.or.jp/material/files/jepa0000380172.pdf