それってホントに売れるの?

2008.09.01

新星出版社  富永 靖弘

 企画会議を行っているとあるテーマで盛り上がり、発想がどんどん膨らんでゆく。
 参加者の間には、すごく良いものが出来るような期待感がわき上がる。こんな感触は会議に出ていると、よくある。ところが冒頭のひとことが出る(あるいは私が出す)。新たな企画や事業を立ち上げるとき、必ず直面する言葉である。
 電子出版の初期の頃から興味を持ち、何度となく取り組もうとしながらあと一歩が踏み出せない。その原因ははっきりしている。パッケージ型ソフトならまだしも、ダウンロードコンテンツに対しては、「売る」という実感が伴わないのだ。 実用書を書店店頭で何十年も売ってきた。書店現場に通い立地や客層を見極め、陳列方法を考え商品を置いてその結果を追求してきた。そこには確かに目に見える読者や店があった。
 しかしこれには大きなコストと無駄が発生する。こんな無駄やコストが削減されるなら大歓迎である。コンテンツの二次利用による低コスト、流通経費ゼロ、在庫ゼロ。しかし読者に届いて売れなければなんにもならない。電子出版に勝手に期待をしてきたが、そんなおいしい話は世間にあるわけはない。土俵が違えば方法や感覚も違う。電子出版を「売る」という感覚はどんなものなのだろうか? いまだ勉強と模索の最中である。