バージョン2.0

2008.06.01

岩波書店  上野 真志

 ゴールデンウィーク前、「ドコモのブランドロゴ 7月から変更」というニュースが流れました。変更の背景には、番号ポータビリティーでの一人負けなどの状況があるとか。変更前のキャッチフレーズ「DoCoMo2.0」は結局1年もたなかったことになります。5月の請求書とともに届いた小冊子では、早くも表紙が成海璃子に。
 「Web 2.0」以来大流行の「2.0」。皆さんも『プロ野球2.0』『口コミ2.0』などの書名や、「鍋2.0」のようなネタをご覧になったことがあるかもしれません。(後者は2.0リットルの鍋という意味ではないですからね)
 固定小数点表示の数字といえば、われわれに取っては、バージョン表示でおなじみですし、「Web 2.0」もそれを意識したのでしょう。それが、広く世の中の人に新鮮なものとして受け取られた背景には、この数字が、(1)新しい世代に発展した、(2)従来の延長線上(線形の発展)ではなく画期を刻む(非線形の)発展である、の2点を感じさせるものであったことがあるようです。
 しかし、これだけ広まると陳腐化するのも早くなるわけで、しかも「2.0」ならぬ「2.1」とか「3.0」などという表現もあふれてくると、「またかよ」ってなもの。さらに、(実際には違っていても)線形の発展を示しているに過ぎないと思われる。「2.0」を知ってしまえば「2.1」も「3.0」も想定内ですから。ドコモが「DoCoMo2.0」を捨てたのもこんな状況判断があったのでしょう。
 そうそう、今は無き雑誌『bit』の「bit悪魔の辞典」で、バージョン数とは「ソフトウェアの完成度を表す数字」「分数形式で、値が1に近いほど完成度が高い。一般には分子のみを表示する」「分母の値は公にされない」というのがありました。
 皆の思っている分母が大きければ、分子の「2.0」を「2.1」にしようが「3.0」にしようが、所詮は線形の発展と受け取られるのでしょうね。ドコモの分母は2ではなかったようですし、ウェブの分母はいったいいくつなんでしょう。あるいは、われわれの電子出版ではいくつ?
 そんな埒もないことを考えて、蒼井優や北川景子のCMが終わってしまったことの憂さを晴らしている今日この頃でした。