出版社も外へ打って出よう

2008.05.01

JEPA 事務局  三瓶 徹

 先日、日本出版学会の春季研究発表会でデジタル時代の図書館と出版と題した特別シンポジウムがありました。大学出版会や図書館から悲鳴に近い声が出ていました。IT技術の進捗や検索企業の参入、欧米出版社の動きなどからみて、日本の現行の出版システムが生き残れないのは明らかで、それに対しての議論を巻き起こそうとしている出版学会の努力は買いたいと思いました。
 もともと、デジタル化しても情報の選択や編集などの信頼性付与という出版社の役割が無くなる訳ではなく、それに見合ったコストを読者から、どういただくかがポイントであることに変わりはありません。エンタメ系(小説、漫画)、情報伝達系(ニュース、雑誌、ハウツー物)、学術系(論文、専門書、教科書)、データベース系(辞書、医療データ、判例)それぞれに多くのビジネスモデルが考えられ、一律の処方箋では解決できません。
 理想的なアイデアであっても、実現するには既存モデルとの摩擦は避けられず、どうすれば出版力を疲弊させずに、次世代に移行させるか、日々のビジネスを続けながら考えるしかありません。出版社はIT系に比べ情報の選択や編集という技量では一枚も二枚も上手です。戦略を明快にして着々と進められている出版社もあります。籠城ではなく、出版という枠から外へ打って出ることも選択の一つかもしれません。