JEPA 事務局 三瓶 徹
家庭にパソコンが常備されるようになって、インターネットは出版インフラとなった。さらにパソコン以外の携帯電話やゲーム機にまで電子書籍が提供されるようになった。それも、ここ数年で急拡大してきた。早くから取組んだ辞書の分野は別として、やっとビジネスとしての電子出版が始まったかに見える。
★急拡大したケータイ向け電子書籍市場
いつも身から離さないケータイが、パソコンを通り越して、情報生活の中心となりつつある。遠くのスーパーより近くのコンビニ、パソコンよりケータイなのである。細切れの暇な時間は、ケータイによる暇つぶしが習慣になった。更に加えて、机に座ってパソコンのスイッチを入れるより、ベットに寝転がってケータイでネットを見る習慣ができた。本を読む行為には長時間の集中力が必要だが、電子コミックは集中力を必要とせず、楽しんで読める。次々と読んで10回ダウンロードして400円、ベットに寝転がって一晩に2、3千円も読んでしまうことも例外ではないらしい。
ただ、ケータイの場合は画面が小さく、表示できるメニューは少ないので、どうしても先頭画面に並んだコンテンツの購入だけが多くなる。上位3社も上位を維持するためにメディアへの広告料支払いも多いらしい。いつまでも一部のコンテンツだけが売れる「枯木も山のにぎわい」では困る。電子書籍データベースを利用した検索サイトやSNSと連動した紹介サービスが増えれば是正されるだろう。
★携帯ゲーム機へも学習系コンテンツ
任天堂の携帯ゲーム機「Nintendo DS」は、発売後29ヶ月で1600万台普及し、「脳トレ」も続編と合わせて750万本が発売されたという。DSはゲーム機の枠を超えた新しい「メディア」になる可能性がある。携帯電話より画面も大きいので小説も読め、手書き入力は辞書やクイズなどの学習系コンテンツにも適しているようだ。任天堂はファミコン時代からゲームコンテンツは厳選し品数を抑えてきた。ROMを大量に供給できる半導体メーカも限られている。無駄玉は大きく収益に影響するからだ。DSのユーザ層をマニアから年配、女性を含めた一般の方々へ拡大しようとしているらしい。それには一般の方々を満足させる多種のコンテンツが必要で、ROMでは在庫リスクが大きいのでダウンロード型になるかもしれない。任天堂の戦略に大きく依存しているわけだが、ユーザの金と時間を、少しなりとも、出版業界に分けて頂けるなら、豊富なコンテンツを持つ「出版社」にとってビジネスチャンスになるかもしれない。日本電子出版協会の委員会で、協力できることはないか勉強を進めることになっている。