今月の声 「辞書が知っている“電子出版”の未来」

2005.08.01

三省堂  神藤 利章

 いつでもどこでも、調べたいときに引ける辞書として、iモード通信網を利用した世界最初のケータイ辞書「三省堂辞書」が誕生したのが、1999年2月だった。
 6冊の辞書が使い放題で月額使用料50円というのも衝撃的な出来事だった。
 パソコンを目の前にすれば、気になる“ことば”を自在に調べられる環境も、1999年8月にポータルサイトの goo でリリースされた『大辞林』の登場で本格化した。
 ハードディスク格納型などのパッケージ系辞書ソフトやプリインストール系辞書ソフトが席捲していた時代から、インターネット利用のオンライン辞書検索サービスに主役の座が移り変わったのも、ブロードバンドが普及し始めて、21世紀を目前にしたこの時期だった。
 オフラインの移動状況下では、IC型電子辞書が紙の辞書を駆逐し、市場が今もなお拡大しつつある。
 情報端末の進化とともに、いわゆる“電子辞書”もまた大きく様変わりしていく中で、次世代の“辞書引き”スタイルがおぼろげながら見えてきたと言えば嘘になるかもしれない。