海とネットと出版と

2000.06.01

NTTコミュニケーションズ  宗川 真人

 仕事柄、「電気通信サービスと電子出版の展望について」なんて書くべきなので しょうが、さっぱり面白くなさそうなので、勝手ながら趣味に関した話題をひとつ。 もう、かれこれ15年間もウインドサーフィンをやっていて、ここ数年間はかなり 熱中しています。理由は三つあって、一つは子供に手間がかからなくなったこと、 一つは使い捨てコンタクトが利用できるようになって行き慣れない海でも怖くなく なったこと。最後の一つはインターネットの普及のおかげです。
 どういうことかと言いますと、まずバーチャルなネット上のコミュニティでいろ いろな人と知り合って、リアルな世界でもつきあいが始まり、これまでとはかなり 違ったスタイルでウインドができるようになりました。
 それからどこの海(ちなみにウインドする海岸をスキーのように「ゲレンデ」と 言います。)がいいかもネットで情報収集することができるようになりました。 さらに海に行くときは、まず気象情報が重要ですが、これもネットでリアルタイム に情報収集。さまざまな予報サイトがあって「日本海に低気圧があって、南西の風 8m/sだったら千葉の御宿に行こう!」ということになります。
 またとても大事なのが、ボードやセイル等の道具の調達です。ウインドサーフィン とは実に道具にお金がかかる、逆に言えばいかにいい道具を安く手に入れるかが 重要になります。ショップのプライス調査から通信販売、さらに個人同士の売買、 いわゆるオークションみたいなものまで、幅広く購入の機会をネットは提供して くれます。
 それから各メーカーが出している最新の製品情報もすべてネット上で調べることが 可能です。
 という訳で、自分の趣味はネットと切っても切れない間柄になってしまいました。
 それでは、標題に入っている「出版」との関係は何だ?ということになります。 ウインドサーフィンでは、スキーやスノボ等と同様にいわゆる専門誌というものが あります。私も以前はこの「専門誌」を毎月のようにとっていたのですが、気づいて みると今はほとんど買わなくなくなっているのです。なぜだろう?と考えてみると、 そうです、専門誌が担っていた機能のかなりの要素がネットに代替されているから みたいです。
 コミュニティ、ゲレンデ情報、ギヤ最新情報、ショップの広告、個人売買等、ネット の方が早い、安い、うまいと牛丼のような状態になってしまっています。 もちろん、専門誌にはその他にもレース情報、テクニック講座やプロセイラーの取材 など現在のネットにはないコンテンツもあるのですが、ほとんどは本屋の立ち読みで 間に合ってしまいます。(出版社の方、ごめんなさい。)
 じゃあ、専門誌をそのままネット出版すればいいか?というとそんな単純なものでは ないような気がします。出版という紙メディアをベースとした既存の業界があって、 そこで紙メディアを電子的なメディアにどのように替えていくかというアプローチ ではなく、ユーザのそもそも望むコンテンツは何か?、それを提供するために適した メディアと方法は何か?という様にユーザ指向で考えていく必要があると思います。 ただ、それが現在の出版という業界にアドバンテージがあるのかどうかは私にはよく 分かりませんが。