電子書店って...

1999.11.01

丸善  鈴木 幹夫

 最近では第二国立国会図書館が電子図書館を目指すとか、某大手私立大学図書館が電子 図書館化に取り組んでいるといった話はよく耳にするようになりましたが... さて、弊社は...と申しますとそのようなエンドユーザー、図書館、研究機関等々が 電子化を進め変貌をとげる中で出版社として、書店としてどのように変化してゆくのか ...その10年後の姿を想像することは、そんなに容易ではありません。
 JEPA会員各社の多くが進めていらっしゃる出版物の電子化については、弊社も大き く遅れないように心掛けながら理化年表をCD-ROM化したりしているといったレベ ルにあるというのが正直なところでしょうか。ただ、私は出版畑の人間ではありません ので、本当はもっと大きな計画やプロジェクトが進行しているのかも知れませんので、 この点についてご興味のある方は弊社の出版の人間にお尋ねいただくとして...
 それでは、直接、私に関係のある本の小売について触れてみましょう。皆さんもご存知 のようにwww書店を95年に開始し堅実な成長をしています。amazon.comのような大躍進 はできていませんが...ただ、この影に隠れて知られてはいませんが機関ユーザー 向けのイントラネットサービス「Superちょいす君」が同時期にリリースされ現在 1600以上の大学、企業等でご利用いただいております。その後継システムとして この7月には「Knowledge Worker」をリリースしました。
 「Knowledge Worker」が大きく従前サービスと異なるのは海外の電子ジャーナルのアー ティクル(論文)へダイレクトにLinkしている点です。海外の主要大手出版社は電子 ジャーナルをそれぞれに発表し展開してきましたが、まだ、浸透しきっていないのが 現実です。その理由の一つが電子出版物を一堂に揃えた電子書店が無いということでは ないでしょうか。弊社の新システムは未だ完璧なものではありませんが、そのような ユーザーのニーズに応えるソリューションの一つとして始まりました。初年度である 2000年については約4,000タイトルの掲載ができればと考えています。
 加えて、お話ししますと電子ジャーナルと電子書籍の垣根が無くなりつつあるように 感じています。特に百科事典や年鑑、人名録といった作成に多くの時間を費やすものから 始まっていますが、製作過程から販売を開始するという表現になるのでしょうが雑誌の 販売に近づいていると言えるでしょう。
 最後に私が大変残念なのは、このような弊社の試みが海外出版社とは始まっているの に国内の出版各社とはスタートすらできていないということです。日本の出版物の電子 化の流れの中でも一役買える電子書店になりたいものだと夢見ています。