ところでDVDってDVDビデオのことですよね
1998.10.01
東芝 恒川 尚
最近次のような三つの会話をよくする。
その 1.DVDは売れてますか。 今のところ国内では30万台を越えたところ、アメリカではもう少し売れてま すよ。
その2.DVDは面白いですか。 うん、なかなか面白いですよ。これまでのメディアにない特長があって面白さ がありますから。
その3.DVDを作るのは難しいのでしょう。 凝らなければ易しいのだけれど、確かにいろいろ制約があって、難しいかもし れないですね。
そして、いずれの会話もその次の言葉が、冒頭の「ところでDVDってDVD ビデオのことですよね」となる。
DVDには、ビデオとROMという二種類の出版メディアがある。(音楽用D VDは別として)このところ、Windows98の登場を背景にパソコンの 上で動くDVDーROMが注目されビデオよりはROMという風潮を見受ける。
しかし、そんなに安易にDVDーROMが優位と断じてよいのか。というのが、 本日のメッセージである。CD-ROMが、売れなくなった訳を考えてみて欲 しい。
ご存じのようにCD-ROMを作るのには、本を作る以上に手間がかかる。し かし、残念ながら本のように多数は売れなかった。一方、CD-ROMは誰に も作れるようになった。そのために販売計画のあまい作品が多数でまわった。 どう考えても文庫本や、週刊誌よりも内容が乏しいにもかかわらず数倍以上の 価格をつけて売られてきた。一時は、パソコンユーザが増え、もの珍しさから 買う客に支えられて、順調な市場のように見えた時期もあった。しかし、イン ターネットという素晴らしい対抗馬があらわれたために、CD-ROM市場は、 冷え冷えとしている。元気があるのは、本と同じように内容が豊富で、莫大な 制作費をかけているが,たくさん売れるが故に安価なリファレンスもののみに なろうとしている。
そこで、DVD待望論であるが、冷静に考えてみて、CD-ROMで失敗し たものがDVD-ROMでうまくいくとは思いにくい。少なくともDVD-R OMでできることはすべてCD-ROMでもできる。容量は確かに二層ディス クを使えば、十数倍以上になるが、製作コストも単純には十数倍かかる。制作 期間も延びてリスクはより大きくなる。音や映像の出る夢のメディアとして登 場したCD-ROMの弱点は画質であった。しかし、ユーザが本当に期待して いたのは紙から音や映像が出ることであって,パソコンのディスプレイからで はないように感じる。現行技術ではCD-ROMは紙メディアを越えることが 出来ないが故にユーザが離れていったのではないか。とすれば,DVD-RO Mはそれを解決した物とは思えない。であるか。どうも、DVDーROMは記 憶メディアとして使うのが一番。確かに数枚組みのCD-ROMで検索型のソ フトだとDVD-ROMは有効ですがね。
しかし、DVDービデオは違う。DVD-ビデオはビデオテープの進化した 物である。第1の特長は,扱い易さである。小さい、軽い、劣化しない。第2 にランダムアクセス,第3が高品質な映像と音である。しかし、最大の特徴は ビデオテープの特長を包含していることである。さらに製造コストが安い。製 作コストも、ビデオの製作費に比べれば、ほんの少しの追加で、ビデオテープ ではできなかった新しい世界が広げられる。しかもユーザにはビデオテープよ りも安い価格で届けられる。
紙とCD-ROM,ビデオテープとDVD-ビデオを対比させたとき,録画 できないという決定的な相違があるものの,出版メディアとして見たとき,そ の優劣は日を見るよりも明らかであると思うのですが,JEPAの読者諸兄は どのようにお考えになりますか。