パソコンのススメ

1997.12.01

アスキー  佐藤 英一

 商売柄、「今度パソコンを買おうと思っているのだけど、何がいいのかな」と聞かれることがある。 この手の質問には、お約束の「パソコンで何をやりたいの?」と切り返すわけだが、こういう輩にかぎって「インターネットとかさ、CD-ROMも見てみたいし…」というような煮え切らない答えが返ってくることが多い。 そしてたいていの場合、次に「どんどん新しい機種が出てくるじゃない。すぐ古くなっちゃうんじゃないかと心配で」というセリフが続く。 これに対しては「思い立った時が買い時。そんなこと言っていると一生買えないよ」と答えるのが、最近の業界人の慣例らしい。
 前号で久和氏も指摘しているように、Windows95ブームで急速に出荷台数を伸ばしてきたパソコンは、ここにきて一気にブレーキがかかっている。 踊らされて買ってはみたものの、難しすぎて使えない。 マニュアルはわからないし、ユーザーサポートに電話しても通じない(弊社のようなパソコン系の出版社にも責任の一端はある)。 新機種が次から次に出て買ったらすぐに古くなる。 パソコンは家電製品ではないということに、誰しもが気づいたのだ。
 そこで、最近私は積極的な方には「出来合いを買うのではなくて、自分で組み立ててみたら」と勧めることにしている。 パソコンを組み立てるというと、ハンダごての世界を想像する方もいるかもしれない、いまは部品点数が20点ぐらいのプラモデルを組み立てる感覚にかなり近い。 もちろんそれなりの覚悟は必要だが、専門家でなければできない代物ではなくなっている。 また洋服のセミオーダーのように、いくつかのオプションから自由に部品を選べば組み立ててくれるショップもある。
 自分で組み立てれば愛着もわくし、市販品とは違うからメーカーの矢継ぎ早の新製品の投入に怒りを覚えることもない。 値段はもちろん安くあがるし、あとで部品ごとにアップグレードすることも比較的容易だ。 しかも、パソコンの動作原理はわからないまでも、どんなものでパソコンが構成されているかぐらいは理解できる。 最初の苦労を乗り越えれば、今後、家電製品ではないパソコンを使っていく上での幾多の困難に立ち向かう準備は十分に整ってしまうのだ。
 パソコンは、これからもどんどん使いやすくなっていくし、ビジネスツールとして、いま以上に必須になるのは間違いない。 しかし、パソコンを組み立てるといったマニアックな世界もそれはそれで楽しい。 いまはテクノロジーが先行し、コンテンツはついていくのがやっとという状況だが、パソコンのようなぐちゃぐちゃで、ちょっといかがわしい世界から新しいものが生まれてくるように思う。 ほんとうに商売になるコンテンツは、パソコンではなく別のプラットフォームに乗ることになるのだろうが、いまはパソコンにどっぷり浸かってみたい。まだまだ得体の知れないものが出てきますヨ。