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縦の物を横にする(4)『縦組横組変換自在電子出版』などというたわいもない発想で連載の誌面を3回も使ってきた。この号で年も改まるどころか2000年を迎える。*1これ以上続けると編集長に怒られそうなので今回は縦横問題の最終回である。 横組みでは何の問題もないのに縦組みになると途端に困るのが洋数字と欧文である。本来横に組む文字を縦組みの中に取り入れるため,古くから種々の工夫が行われてきた。 通常は欧文を横組みのまま90度右に回転し縦組みの行へ組み込む。これは本を90度回転してしまうのと同じことなので,どんなものでも組み込める。でも少々読みづらい。 この組み方が縦組み中における欧文のデフォルトの組み方である。しかし,なぜか名称がない。ここでは「寝かせ組み」と勝手に名付けておく。 次に「縦中横組み」と称する組み方。例えば「99年4月」など2桁程度の洋数字は縦組みの行の中に横に直接組み込んでも行の幅をはみ出さない。3分の1程度の横幅しかない活字を使えば3桁程度までは可能だ。これは見た目も良く洋数字と和文との組み合わせでは良く使われる。 「縦中縦組み」というのもある。和文と同じ大きさにデザインした英字を使い英字を和文と同じように縦に配置する方法だ。「TV」とか「IMF」など略語はこの組み方をすることが多い。特に「CS放送」など和語や漢語と組み合わさって複合語を作る場合はこの方法以外ではたいへんおかしな感じになってしまう。 しかし略語以外の通常の欧文綴りをこの縦中縦で組むと何とも間の抜けた組版になる。略語でも最近は「Java」など小文字入りの略語が増えた。こう行った語も略語なので縦中縦で組むのだがこれがどうにも間が抜けてしまう。 桁の多い洋数字も縦組みでは困る。上記の「縦中横」も2、3桁までが限界である。といって数字を寝かせて組み込むのはやはりおかしい。 そこで「洋数字風・漢数字表記」が登場する。「1999年」は本来「千九百九十九年」と書くが,これを「一九九九年」と記述するわけだ。これは文字の変換をともなう処理になる。 横組み中では何の区別もなしに使えた欧文や洋数字が縦組み中では上の4つの記述方法に変化する。逆の場合は4つの表現を1つにするのでまだよいが,漢数字の処理では問題が残る。 現状の電子出版ではいろいろな便宜的な工夫で以上の問題を処理している。半角の英小文字・大文字・数字の連続は「寝かせ組み」,全角の英数字は「縦中縦」,半角数字2桁までが和文の間にあれば「縦中横」でといった具合だ。 しかしこれは便宜的方法である。横組みでは略語などでも半角のプロポーショナルフォントを使いたい。すると以上の規則では縦組みで「寝かせ組み」になってしまいうまくない。また,漢数字を自動で変換すると「1郎さん」や「2郎さん」が生まれかねない。ということで縦横自動変換を実現するには縦組みになった時にどう組むかを文字ごとに指定することが必要になる。 『縦横自在電子出版』の道にはこれ以外にも編集者泣かせの困難がたくさん待ち受けている。でもこの辺りで誌面が尽きたのでその話はまた別の機会にしたい。 ところで上の「縦中横組み」の話の中で「1999年」を縦組み中では「99年」と縦中横組みにすると書いた。では2000年はどうするのだろうか?これは『縦中横組みの2000年問題』である。もちろん対策はまったく進んでいない。*2 |