NIPPON! チャチャチャ!
今年の冬は長野オリンピックが素晴らしい2週間をプレゼントしてくれました。冬のオリンピックはチアホーンが鳴って賑やかですが、室内ゲームが少ないせいか「NIPPON! チャチャチャ!」を聞く機会が少なかったですね。
この「チャチャチャ」の前につく「日本」の読みは当然「ニッポン」です。
オリンピックで金メダルをとったら世界一、メダルは取れなくても日本新記録なら「ヨッ!日本一!」と称賛しましょう。この場合はやはり「ニッポン」の方が語呂がよいようです。
メダルを取ると日の丸が上がります。それを見て「♪ああ美しい日本の旗は」と歌うと、この場合は「ニホン」です。
長野を離れて東京へ、地名の「日本橋」は「ニホンバシ」なのに「♪お江戸日本橋…」と歌うと「ニッポンバシ」です。
日本橋には日本の中央銀行、日本銀行がありますが、お札の裏を眺めて下さい、この銀行名は「ニッポン」です。国名の読みが二つあるというのは本当に面白い話です。
それにしても「日」と「本」で「ニホン」「ニッポン」と読みがつくのは不思議ですね?素直に読むと「ニチホン」が正しいような気がします。
でもこれは日本語のルールです。難しい説明は省いて次のような例を見てください。凸版 欠品 突風 潔癖 割烹
一般 一匹 一夫一婦 一兵卒 一方といったように「ツ」「チ」が「ッ」に変化し、後ろの「ハヒフヘホ」が「パピプペポ」になるんですね。
これでなるほど「日本=ニチホン」は「ニッポン」なのかと納得がいきます。でも「ニホン」のような変化は私には類例が見当たらず謎です。
謎は謎として置いておいて、検索キーワードに読みを振る段で困るのが企業名です。「日本」が含まれる企業名はたいへん多いのですが、それを「ニホン」と読ませるか「ニッポン」読ませるか?を調べてみました。
東京証券取引所のサイトで上場会社を検索してみました。「ニッポン」で検索できる会社は89社、「ニホン」で検索できる会社は77社。どうやら会社名では「ニッポン」が優勢のようです。
「ニッポン」の例を下にあげます。日本軽金属、日本航空、日本コロムビア、日本信販、日本水産、日本通運、日本電気、日本ハム、日本ビクター、日本郵船、近畿日本鉄道、新日本製鐵、全日本空輸、大日本印刷、西日本鉄道……でもこれらの企業名、普通は「ニホン」と呼ばれていませんか?
さてこういった具合ですから検索インデックスの作成時に企業名の読みを正確に「ニッポン」と設定すると読者が「ニホン」で検索して検索できない恐れがあります。
上記のサイトのような会社名のデータベースなら「ニホン」でだめなら「ニッポン」と両方検索することも期待できますが、一般記事などの検索だと「検索できなかった」で終わりになる恐れが大きいでしょう。もっと曖昧に検索できるよう工夫が必要になってきます。
そこで、「ニホン」には「ニッポン」、「ニッポン」には「ニホン」と読みを追加する気の遠くなる作業が発生します。
ところでこの話、表記で「日本」と検索すれば済むのですが、上記の東証のサイトで「日本」と漢字で検索すると「ニッポン放送」は出てきません!検索って本当に難しいですね。
『情報管理』Vol.41 No.1 Apr.1998 より転載