メタバース

2022.08.23

メタバースとは

メタバースとは、オンライン上に構築された「仮想空間」のことを意味する。仮想現実上の世界という意味が含まれるため、メタバース≒VRとして説明されたり、話が進んだりすることもある。

 

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メタバースの基礎知識

メタバースの語源は、1992年に刊行されたSF小説『Snow Crash』(Neal Stephenson著)内に登場した3次元空間を意味する「Metaverse」となっており、この小説で生まれたAvatarとともに、2022年現在に、世界各国で言われているメタバースの概念の大元となっている。

とくに、全世界で29.1億人のユーザ数を獲得しているSNS「Facebook」を開発したFacebook社が、2021年10月に社名をFacebookからMetaへ変更したことで、メタ(Meta)という単語とともに、メタバースの認知度が一気に高まった。

さらに、2019年末からの、新型コロナウィルスによる世界的なパンデミックが、オンライン上、さらには仮想空間内のコミュニケーションとして、メタバースの浸透が一気に進んだ。

 

2022年のメタバース

冒頭で説明したように、メタバースは仮想空間であり、仮想現実の世界を意味する。実は、メタバースの単語が登場していこう、何度かメタバース(またはそれと同等の概念)の普及の兆しはあった。たとえば、今から約20年前、2003年に登場したSecond Lifeもその1つである。

しかし、結果的には普及せず、あくまでリアル社会(現実)に似せた偽物という捉えられ方が強く、アーリーアダプターや新規ビジネスの開拓を目指す一部のユーザの盛り上がりに終わった。

2022年現在のメタバースの浸透、ブームに関しても、それと同じという見方があるものの、今度こそ一般化するのでは?と期待する声が増えている。

その理由は、まずはメタバースを支えるテクノロジーの進化である。

1つは仮想空間でのビジュアルを実現する機材の進歩(CGを実現するコンピュータの処理速度、Oculus Quest 2をはじめとしたヘッドマウントディスプレイ他)、さらに、それらをつなぐインターネットインフラの高速化(インターネットの普及、5Gなどの高速化)といったものである。

過去のブームと比べ、メタバース内の表現と接続面が一気に進化したことで、現実社会と同等、さらにはそれを超絶する視覚・聴覚などの五感とつながりを生み出せている点が非常に大きい。

そして、先ほども述べたように、コロナ禍により、物理的な対面でのコミュニケーションではなく、オンライン上のコミュニケーションに慣れる人間が増えたことが、メタバースに入り込むことへの障壁を下げている、と筆者は考える。

一方、メタバースの中でもヘッドマウントディスプレイを使用するVRに関しては、ヘッドマウントディスプレイを用意すること、また、それを装着することで発生しうるVR酔いなどから、ユーザ全員が気軽に使用できる状況ではないため、今後のさらなる普及に向けて、改善が期待されている。

 

日本でのメタバース

日本でのメタバースについては、FacebookのMetaへの社名変更と前後する形で、アバターを使ったYouTuber、いわゆるVTuberの登場や、VRChatにおけるユーザ数の拡大があり、注目度が一気に高まっている。

また、2021年末の『M-1グランプリ』がclusterと連動して、副音声をVR空間内でリアルタイムで配信したり、2025年に大阪で開催される2025年日本国際博覧会(EXPO2025)がすでにVR空間内にパビリオンの建築を進めるなど、物理的なイベントやエンターテイメントとの連携が進んでいる。

 

メタバースと出版

最後に、メタバースと出版の観点での事例を紹介する。

まず、日本ではメタバースを題材とした書籍が2022年初頭から数多く出版され、多くの書店でメタバースコーナーを設けるなど、そのムーブメントは広がっている。筆者が所属する技術評論社では、3月にバーチャル美少女ねむ氏による『メタバース進化論――仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界』を発行し、発売から5ヵ月で5刷の大ヒットを記録している。さらに、代官山蔦屋書店と連携し、VRChat内の代官山蔦屋書店を会場としたメタバーストークショーを行うなど、紙からメタバースへの展開を行った。

この他、2021年10月末~11月末にかけて、日本の大手出版社KADOKAWAが全国13書店と連携し、角川武蔵野ミュージアム内にある、3万冊を収蔵する「本棚劇場」をVR体験できるイベントを実施するなど、VR(メタバース)を活用することで物理的・数的な制約を取り払った、新たな可能性に挑戦している。

さらに、更に踏み込んだメタバース内での出版企画としては、大手電子取次のメディアドゥが、VR電子書籍ビューアシステム「XRマンガ」をリリースし、自社運営書店のコミなびVRを皮切りに展開している。

このように、今は物理的なモノ・コトを、オンライン・デジタル空間に置き換える動きが進む中、そうではなく、あらかじめオンライン・デジタル空間での活動・行動・コミュニケーションが前提になり、物理的なモノ・コトと同等の意味合いを持つようになったとき、メタバースの次のフェーズが訪れる、と筆者は考えている。

[馮 富久 株式会社技術評論社株式会社GREEP  20220816]