「漫画村」事件とは
「漫画村」は漫画を中心に違法コピーしたコンテンツを掲載し、無料で閲覧可能にしたいわゆる海賊版サイト。著作権に関する違法性が取り上げられるとともに、無料の違法サイトが運営され収益を得る構造、違法サイトに対するブロッキングの問題などがクローズアップされた。
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この海賊版サイトは2016年1月に開設され、2018年4月に閉鎖された。2017年から利用者が急増し、月間利用者数が1億人規模に登ったとされている。
「漫画村」は閉鎖されたものの、元運営者や実行に関わった者は逮捕・起訴され、2019年に実行役の2名に有罪判決(執行猶予付)が、2021年6月には元運営者に懲役3年、罰金1000万円、追徴金約6200万円の判決が下され確定している。
違法サイトのブロッキング
「漫画村」のような悪質な違法サイトに対して、政府はIPS(インターネットサービスプロバイダー)へのブロッキング要請を行うことを検討したが、そのようなブロッキングは「通信の機密の侵害」や「通信内容の検閲」につながるとして、日本インターネットプロバイダー協会などが問題視した。一方、「漫画村」により、大きな被害を受けていた大手漫画出版社は政府の方針を歓迎するとしていた。
ブロッキングは実際にはISPにより実施される。NTTグループのISP3社は、2018年4月に「漫画村」など海賊版とされる3サイトに対してブロッキングを実施した。それに対して、消費者団体や弁護士などから抗議や差し止め請求などが行われた。
違法サイトの運営と利益構造
「漫画村」は海外のインターネットプロバイダー、サーバーホスティングサービス、コンテンツデリバリネットワーク(CDN)を利用して運用されていた。CDNとはアクセスが集中するサイトに対して、ネットワーク上での配信を最適化して複数サーバーによる配信を可能にして接続をスムースにするサービスである。違法サイトの運営者は各サービスと契約しているが、海外にあるため契約情報の開示は困難であるとされてきた。「漫画村」のケースでは海外のCDNサービス会社に対する開示請求が実現されている。
「漫画村」が無料で閲覧できる海賊版サイトなのに大きな利益を得られたのは広告収入によってである。インターネットには広告の閲覧回数により収入が得られるシステムがあるため、違法であっても多くのアクセスがあるサイトでは多くの広告収入を得られることになる。「漫画村」の違法性が問題視されることによって、広告配信を停止した代理店もあった。
漫画家の赤松健さんは、広告料により漫画村による著作権侵害を助長したとして広告代理店2社に損害賠償を求めて提訴した。2021年12月に東京地裁は違法行為のほう助にあたるとして原告の主張を認め、請求通り1100万円の支払いを命じた。