オープンバッジとは
知識や技能について、紙でなく、国際標準規格に則り発行するデジタル証明/認証のこと。教育・学習に関わる25以上の技術標準を策定している 1EdTech Consortium Inc.(旧IMS Global Learning Consortium) が、その国際標準規格を制定、公開している。
学習・資格証明書として世界各国で活用されており、国内においても、一般社団法人日本IMS協会、一般財団法人オープンバッジ・ネットワーク、株式会社ネットラーニングなどが普及を推進している。証明書発行元の団体や学校等に依存しない標準規格であるため、ユーザーは取得した複数の資格や学習履歴を一元的に管理できるほか、SNSなどで共有することも可能。また、ブロックチェーン技術を取り入れることで、高い信頼性を保つことができる。
もっと詳しく!
オープンバッジの規格は、2012年にMozilla財団によりOpen Badges 1.0が策定され、その後2017年にIMS Global Learning Consortiumに引き継がれた。2020年代には世界各国でもオープンバッジ活用の動きが広がり、2020年時点で47万種以上のバッジが発行され、4300万以上の取得数がある。バッジの発行団体としては、学校、企業、資格団体の他にも、社会人教育会社、コミュニティ、非営利団体、政府機関、図書館・美術館、イベント主催者等に広がっている。ユーザーは、自身のアカウントのウォレットを通じて、各団体から取得したバッジを保管・管理することができる。
オープンバッジのメリット
・ユーザーにとってのメリット
- 国際標準企画であるため、国内・海外の発行元に関わらず取得したバッジを一括して管理することができ、自身の学習履歴や取得資格、修了証等をまとめることができる。取得したバッジは、TwitterやFacebook、Linkedin等のSNSでの公開やメール、履歴書での利用もできる。
- バッジのコレクションと可視化が学びのモチベーションにも繋がり、学習意欲の向上を図ることができる。
- 公開されたバッジについて内容の検証・証明が容易にできるため、学習履歴やスキルを高い信頼性のもとに可視化、アピールすることができる。
- 自身の学習履歴や他者の保有バッジなどから、目指すべきキャリアに向けての学習プランを立てることができる。
・発行団体にとってのメリット
- 証明書をデジタル化することにより、郵送費、発行・内容確認・問合せ対応等の事務作業工数などのコストを削減することができる。
- ブロックチェーン技術を取り入れることで、実質的に偽造・改ざんが不可能となるため、証明書に高い信頼性を与えることができる。
- 取得者のバッジ公開により、資格等の認知を図ることができ、資格取得希望者の拡大等のマーケティングツールとして活用できる。
- 複数の横断的な学習履歴、スキル、資格等の情報を人事マネジメントへ活用することができる。
国内での活用事例
オープンバッジの仕組みは海外では一般化しつつあるが、近年、国内でも利用が広がってきている。大学では、長崎大学、横浜国立大学、関西学院大学、中央大学、新潟産業大学、群馬大学などで取り組みが始まっている。また企業では、NEC、日本IBM、旭化成などが研修等社員教育に活用を広げている。デジタル庁では、2022年1月に策定した「教育データ利活用ロードマップ(PDF)」において、学びの成果を可視化するツールとして、我が国におけるオープンバッジなどのあり方についても検討を進めていくとしている。
2020年3月に開講した講座「Introduction to Jomon Studies(縄文考古学入門)」の講座受講修了者に対して、国内で初めてオープンバッジを発行。
2020年10月にオープンバッジを導入したオンラインスクール「ウェルネススクール」を開始。
「ビジネス数学検定」の全階級で、2020年10月からオープンバッジの発行を開始。
マーケティング検定2 級資格認定者に対し「Advanced Marketer」としてオープンバッジ(デジタル証明書)を交付。
サイマル・アカデミーで通訳者養成コースの修了者にオープンバッジを発行。
令和2年度地域活性化雇用創造プロジェクト「女性の就職サポート事業」研修修了者にオープンバッジを授与。
2021年度からIBT方式・CBT方式に移行している主催検定試験について、合格証としてオープンバッジを採用。
仕様の特徴
オープンバッジにメタデータとして埋め込まれるコアデータには、以下の3種類がある。これらのデータは、JSON-LDで記述される。
Assertion:バッジ保有者個人単位のバッジに関する情報(保有者、バッジの種類、授与日時、有効期限等)
BadgeClass:バッジによって認識される成果に関する情報(名称、説明、獲得基準、画像、発行者等)
Profile(Issuer):バッジ発行者に関する情報(名称、URL、連絡先、説明等)
なお、発行者が、バッジに新しいタイプのメタデータを含めるように拡張機能を定義して公開することも可能な仕様となっている。
仕様の詳細は下記を参照。2022年6月時点ではバージョン2.0が最新となる(2.1が最終候補、3.0がドラフト)。
参考(仕様)
Digital Badges | IMS Global Learning Consortium