私的利用のための複製

2017.03.10

私的利用のための複製とは

 著作権法30条で認められている権利制限の一つ。家庭内で仕事以外に使用する目的であれば著作者に断りなく著作物を複製することができる。同様の目的であれば、翻訳、編曲、変形、翻案も可能となっている。

 

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趣旨

 著作物を複製しようとする時、いかなる場合であっても著作権者の許諾が必要とすれば、著作権法の目的である文化の発展に寄与することに反してしまうことになりかねないため、個人的な家庭内での利用については著作者の権利が及ばない様にしようと規定したものである。

 

適用条件

 私的利用が目的であっても、権利者の許可なく店頭等のダビング機を利用して複製することは、著作権侵害になる(30条1項1号)。大量の複製が行われ権利者の利益を不当に侵害する恐れがあるからである。

 

時代の変化に対応

 私的利用であっても映画の盗撮(映画の盗撮の防止に関する法律)、違法と知ってのダウンロード(著作権法第30条1項3号)、技術的保護手段(著作権法第30条1項2号)の回避など時代の変化とともに新たに違法と規定されたものには注意が必要。電子書籍のDRMを回避する行為は、技術的保護手段の回避に当たると考えられる。

 

自炊

 本をスキャニングしてデジタル化する行為を自炊といい、私的利用の範囲であれば適法である。しかし7人の作家・漫画家が自炊代行業者を提訴していた訴訟において、2016年最高裁が自炊業者の上告を棄却することにより、著作権侵害を認めた知財高裁の判決が確定した。業者が代行してスキャニングを行うことは「業者が複製の主体」とし、私的複製として認められる要件を満たしていないとした。

 

条文

(私的使用のための複製)

  • 第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
    • 一 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合

 

    • 二 技術的保護手段の回避(第二条第一項第二十号に規定する信号の除去若しくは改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うこと又は同号に規定する特定の変換を必要とするよう変換された著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像の復元(著作権等を有する者の意思に基づいて行われるものを除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合

 

    • 三 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合

 

    • 2 私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器(放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性能を有するもの及び録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能として録音又は録画の機能を有するものを除く。)であつて政令で定めるものにより、当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるものに録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

 

 

[生駒大壱 株式会社旺文社 20170306]