著作隣接権とは
歌手や演奏家は著作物の創作をしなくても、音楽の表現に重要な役割を果たしている。このような実演家に認められた権利を著作隣接権という。実演家のほか、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者にも著作隣接権が付与されている。歌手や演奏家、俳優などの実演家が作品に果たす役割を思うと、当然の権利と考えられる。
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著作隣接権の権利
たとえば歌のCDの場合は、次のような権利者が存在する。
- ・作曲家:著作権
- ・作詞家:著作権
- ・歌手:著作隣接権
- ・演奏者:著作隣接権
- ・レコード会社:著作隣接権
著作権法では、著作隣接権として次のような権利を認めている。
実演家の権利:氏名表示権、同一性保持権、録音権・録画権、放送権・有線放送権、送信可能化権、商業用レコードの二次使用料を受ける権利、譲渡権、貸与権など
レコード製作者の権利:複製権、送信可能化権、商業用レコードの二次使用料を受ける権利、譲渡権、貸与権など
放送事業者・有線放送事業者の権利:複製権、再放送権・有線放送権、送信可能化権、テレビジョン放送の伝達権
権利保持期間
著作隣接権の権利保持期間は次のようになっている。
- 実演:実演が行われたときから70年
- レコード:CDなど音源が発売されたときから70年。発売されたなかった場合は、音源の固定(録音)から70年
- 放送・有線放送:放送が行われたときから70年
独特な運用例
著作隣接権が関わる著作物は、記録方法や伝達方法が多様であり、それぞれの市場に合わせた権利の運用が行われている。ここでは、音楽CDと映画についての例を紹介する。
・レンタルCDの場合
レンタル店がCDを貸与するときは、作詞家、作曲家などの著作者、また著作隣接権を持つ歌手、演奏家などの実演家、そしてレコード製作者の貸与権が働く。しかし、実演家とレコード製作者という著作隣接権の保持者については、CDの発売後1年を経過すると貸与権ではなくレンタルCD業者から報酬を受け取る権利が働くことになる。
・映画の場合
「映画の著作物」は、通常、著作権や著作隣接権の権利者が多数になるため、一般の著作物とは異なった扱いになっている。テレビ番組やアニメなども、一般的に映画の著作物とされる。
まず、映画ではその形成に創造的に寄与した者が著作権者であり、監督や製作者がそれにあたるが、職務著作である場合は製作者である法人が権利者となる。映画の配給などの頒布を円滑に行うという観点からも、権利者については契約内容に明記することで混乱を避けられる。
映画においては一般に、俳優、演奏家など多数の著作隣接権の権利者が関与するが、いったん映画の著作物として記録されたものを二次利用するときは、実演家の持つ録音・録画権は原則として適用されない。これは「ワンチャンス主義」と呼ばれる。
しかし、放送のために録画・録音されたものでは、ワンチャンス主義は適用されず、放送以外での二次利用には実演家の録画・録音権が及ぶ。また、再放送においては実演家には差止権はないが報酬請求権が認められている。これも、契約時に二次利用等について記すことで混乱を回避することが可能だ。