配信・閲読用PDFとは
インターネットなどを経由して配布、端末で閲読に供する用途のPDFである。PDFを閲読して表示したり、プリンターで出力したりするにはPDFリーダーが必要であるが、WindowsやMacなどのPC、スマホ、タブレットや電子書籍リーダーなどほとんどすべての端末で様々なリーダーソフトが無料で提供されているほか、Window、Mac、スマホの主要なOSやブラウザにはPDFリーダー機能が組み込まれている。配信・閲読用PDF関連の規格としてPDF/A、PDF/UAがある。
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PDFは印刷のためのページ記述言語を元にして、配布・閲読のための機能を追加して生まれた。バージョンアップを重ねる毎に配布・閲読機能が強化されている。PDF標準は、現在、ISO 32000として規定されているが、配布・閲読関連の機能は数え切れないほどになっている。
配信・閲読用PDFの作り方
配信・閲読用PDFの作り方は二つ分類できる。第一はオフィスソフトやデスクトップパブリッシング(DTP)ソフトなどの編集結果から作成するボーンデジタルPDFである。インターネットで配布される書類、報告書類、ちらし、マニュアルなどの冊子はボーンデジタルPDFが多い。第二はスキャナーなどで本や書類をスキャンして作成したターンドデジタルPDFである。特に紙の本を自分でスキャンして電子書籍化することを自炊という。
配布・閲読用PDFの主な機能
次に配布・閲読用のPDFに関わる要点をあげる。
フォント埋め込み
ボーンデジタルPDFで文字を表示するときはフォントが必要である。PDF制作時に指定したフォントをPDFに埋め込むことができる。PDFにフォントが埋め込まれていれば、どんな端末でも制作時と同じ文字の形を表示できる。フォントが埋め込まれていないPDFを正しく表示するには、PDFリーダーで閲読するときに、制作時に指定したフォントを利用できるようにする必要がある。
検索機能
PDFのリーダーにはPDF内のテキストを検索する機能が備わっているが、ボーンデジタルPDFを検索するには文字コードが正しく設定されている必要がある。また、ターンドデジタルPDFを検索するにはスキャンした画像からOCRなどで文字を認識し、認識結果を透明テキストとしてPDFに設定しておく。
ナビゲーション機能
PDFのしおり(ブックマーク)機能は本の見出しなどのアウトライン項目をツリー構造とした上で、各アウトライン項目から、本文の該当箇所(ページ内位置)へのリンクを設定するものである。ページ数が多いPDFにはアウトラインを設定しておくと、閲覧時にツリー構造をたどって読むことができるので便利である。また、目次や索引から本文へ、あるいはPDFの本文内の参照元から参照先へのPDF内部リンクを設定できる。内部リンクを設定しておくと参照先へ直接ジャンプできる。さらに、PDFの内部から別のPDFやWebページへの外部リンクを設定もできる。
長期保存のためのPDF/A
PDFを長期保存に耐えるようにするには作成時に一定の配慮が必要である。例えば、PDFを開くときにパスワードを入力するように設定すると、長い間にはパスワードが分からなくなってしまうだろう。従って、長期保存用PDFではパスワードを設定してはいけない。PDF/A(ISO 19005)はこうした長期保存PDFを作るときに守るべき項目について規定する標準である。
アクセシビリティのためのPDF/UA
PDFはアクセシブルでないと言われることが多く、PDFリーダーでPDFのテキストを音声で読み上げようとしても正しく読めないこともある。実際には、ISO 32000には、PDFの内容を読み上げできるようにしたり、読み上げ順を正しく指定したり、またノンブルなど読まなくても良いものを指定する機能がある。PDFがアクセシブルでないと言われるのは、PDFの制作時の配慮不足が原因なのである。PDF/UA(ISO 14289)はPDFをアクセシブルにするために守るべき項目について規定する標準である。