印刷用PDFとは
印刷用PDFは印刷会社で入稿データとして使用するPDFである。印刷用PDF作成で重要なことは、制作者の意図した指定が印刷工程で確実に再現されることであり、このデータ交換を確実にするためにPDF/Xという標準が定められている。
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PDF/XはISO 15930の別名であり印刷用データの交換を目的とする標準規格である。PDFの標準規格であるISO 32000では多彩な機能を規定しており、ISO 32000に準拠していて印刷では使えないことがある。例えば、フォント情報が不足していると印刷に使うには不適切になる可能性がある。PDFを制作者するときPDF/Xとして作成し、受け渡しにおいてPDF/Xに準拠するかどうかをプリフライト機能でチェックすると、印刷用データ交換において一定水準の品質の保証ができる。
印刷用データ交換のパターンとPDF/Xのパート
印刷用データ交換には新聞・出版・カタログ・商業出版などの応用領域によって次のようなパターンがある。
① 一回の交換で必要な要素を入手する完全な交換か、それとも、一部の要素は受け手のサイトに存在したり別途交換する部分交換か
② カラーはCMYKデータの交換、または、他のカラー空間による符号化か
③ 送り手が期待する印刷の見栄えを指定するか、それとも、送り手が完全な全域データを提供し、受け手が実際の印刷の条件設定に責任をもつか
④ オブジェクトに対して外部の参照ファイルを使うか、すべてのオブジェクトがPDFファイルに中に含まれるか
PDF/Xはこうした多様なデータ交換パターンおよびベースとなるPDFのバージョンの違いによりパートに分かれている。
① ISO 15930-1:2001(PDF/X-1、PDF/X-1a):PDF 1.3ベース。PDF/X-1a はPDF/X-1に暗号化禁止など若干の制約を課したものである。
② ISO 15930-3:2002(PDF/X-3): PDF 1.3ベース
③ ISO 15930-4:2003(PDF/X-1a):PDF 1.4ベース
④ ISO 15930-6:2003(PDF/X-3):PDF 1.4ベース
⑤ ISO 15930-7:2010(PDF/X-4、PDF/X-4p):PDF 1.6ベース
⑥ ISO 15930-8:2010(PDF/X-5g、PDF/X-5n、PDF/X-5pg): PDF 1.6ベース
完全交換と部分交換
PDF/Xは基本的には完全交換を要求するが、PDF/X-4p、PDF/X-5は一部のデータを外部に置くことを認めている。
カラー空間
PDF/X-1aで使用できるカラー空間はCMYKおよびグレースケールであるが、その他の規格ではRGBも仕様できる。さらにPDF/X-3はICCベースカラーを使ってカラー管理ワークフローを実現できる。
PDF/Xの普及状況
PDF/X-1aは2001年に制定されてから15年を経過しており、多くの印刷会社の入稿に使えるようになっている。近年は、スマホなどで撮影した写真を印刷につかうケースが増えているのでRGBカラーを入稿に使えるPDF/X-3のニーズも増えている。