支分権とは
著作権は実際には、支分権と呼ばれる具体的な権利の集合になる。著作権の主な支分権には、複製権、上演権及び演奏権、上映権、公衆送信権、口述権、展示権、頒布権、貸与権、翻訳権がある。著作権の支分権と著作物の種類は密接に関係している。たとえば、電子出版においては、自動公衆送信を許諾されることによって出版が可能になる。紙の出版物は複製権を許諾されることにより印刷・出版できる。戯曲は上演権、音楽は演奏権、映画は上映権が対応することになる。
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出版において重要な支分権
出版に関連する重要な支分権は自動公衆送信権と複製権だ。電子出版物をダウンロードなどのかたちで販売する場合は、自動公衆送信権を行使していることになる。紙の出版物では、複製権によって著作物を印刷などの方法で書籍や雑誌というかたちにできる。しかし、紙の出版物は複製権だけでは完結しない。譲渡権によって流通・販売を行うことによって出版としてなりたつことになる。
さまざまな支分権
著作権の支分権をそれぞれ解説する。
・複製権:著作物を複製する権利。具体的には、出版のために著作物を印刷などにより複製すること、映画や音楽などの録画・録音ファイルをコピーすることなど。
・上演権及び演奏権:公に上演したり演奏したりする権利。具体的には、劇の上演、音楽の歌唱、演奏など。
・上映権:公に上映する権利。映画やビデオを公衆に見せること。
・公衆送信権等:公衆送信したり、自動公衆送信の場合は送信可能化したりする権利。公衆送信の代表的なものは放送で、自動公衆送信の典型はウェブでの伝達になる。また、自動公衆送信の前段としてサーバーに著作物をコピーすること、サーバーをネットワークにつなぐことを送信可能化という。
・口述権:公に口述する権利。文芸作品の朗読など。
・展示権:美術の著作物や未発行の写真の著作物を原作品により公に展示する権利。
・頒布権:映画の著作物をその複製によって頒布する権利。映画やビデオの複製物(DVDなど)による頒布、複製されたファイルのダウンロードやストリーミング。
・譲渡権:著作物を原作品や複製物の譲渡により公衆に伝達する権利。映画の著作物は除く。一度適正に販売された書籍や雑誌に関して、著作者の譲渡権はなくなる。これを権利の「消尽」といい、購入した本を古書店などに売却できることになる。しかし、送信による電子出版物の場合は、本のようにものが移動するわけではなく、送信元にもデータは残るので権利が「消尽」することはない。
・貸与権:複製物の貸与により公衆に提供する権利。
・翻訳権:著作物を翻訳する権利。
・翻案権:編曲や変形、脚色、演劇化、映画化などに関する権利。
[清水 隆 20161209]