Kindleとは
正式名称はAmazon Kindleで、Amazon.comが製造・販売している電子書籍リーダー(以下、端末)を指す。また、Kindleの関連のストアやアプリケーションなど、そのコンテンツ配信サービスを幅広く示している場合もある。
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端末としてのKindle
Amazon.comのアプリケーションストア「Kindle ストア」から、購入した電子書籍などのコンテンツをダウンロードして使用する。コンテンツのダウンロードにはPCなどを介する必要はなく、無線LANを通じて端末に直接行える。モノクロの電子ペーパーE-inkディスプレイを用いた端末と、独自のOSを搭載し、液晶タッチディスプレイを備えたタブレット端末の2つの系統がある。
E-ink端末「Kindle」の最初の端末(第1世代)は2007年11月にアメリカで発売された。主な仕様は以下の通りである。
- ディスプレイ:6インチ、4諧調グレースケール
- 大きさ:重さ295g、厚さ18mm
- データ記録方式:内部メモリ250MB+SDメモリカードスロット
- 通信方式:Wispernet(携帯電話網を利用した高速通信)
その後も、以下のような仕様変更を重ねて市場を拡げていった。
- Kindle 2(第2世代、2009年2月):内部メモリを強化(250MB→2GB)、SDメモリカードスロットを廃止。
- Kindle 4(第4世代、2011年9月):16階調グレースケール。キーボードをなくして軽量化(170g)。
2012年になるとKindle Paperwhiteが発表され、日本での発売もスタートした。Paperwhiteのシリーズは内蔵ライトを備えて「目に優しく本物の紙の本のような読み心地」を謡っている。E-inkパネルをPearlからCartaに変更してディスプレイの鮮明さを増したり、CPUの高速化、解像度の向上など、世代を追うごとに改良が加えられている。
- Kindle Paperwhite 1(第5世代、日本発売2012年11月)
- Kindle Paperwhite 2(第6世代、日本発売2013年10月):メモリ増強(2GB→4GB)、E-inkパネルをPearlからCartaに変更。
- Kindle Paperwhite 3(第7世代、日本発売2015年6月):解像度向上(212ppi→300ppi)。
E-inkディスプレイを用いた端末は、このほかに2014年10月発売のKindle Voyage、2016年4月発売のKindle Oasisがある。いずれもページめくりボタンがある点で特徴的だが、前者は全機種内で最も薄く(7.6mm)、後者は131gという軽さ、バッテリー内蔵カバーを使った駆動時間の長さ、グリップに備えたボタンによる敏速なページめくり、内蔵ライトの明るさなどを誇っている。
Fire OSを備えた液晶タブレット端末機は、その第1世代が7インチディスプレイ、重さ413g、内部ストレージ8GB といった仕様で2011年11月に発売された。続いて2012年に、上位モデルKindle Fire HDシリーズが、さらに翌年Kindle Fire HDXシリーズが発売されている。2016年11月時点で、重さ341gで内部ストレージ32GB、前の世代からRAMを1.5倍にして処理速度を上げるなど、改良と低価格化を進めた第6世代のFire HD 8が最も新しいモデルである(2016年9月発売)。
Kindleストア
上記のようなAmazon Kindle端末で読めるコンテンツを販売・配信するサービスが、「Kindle ストア」である。日本国内でのサービス開始は2012年10月。Kindleストアの総配信数から洋書や端末、アクセサリを除いた、いわゆる「Kindle本」の配信数は、2016年11月30日時点で50万点を超えている。この中には、セルフ・パブリッシングであるKDP(Kindle Direct Publishing)を利用して作成・販売されているものも含まれる。
Kindleストアの大きな特徴としては、電子書籍に紐づけされた紙の新刊単行本、中古本、文庫版などの価格を、同時に表示し比較することを可能にしている点が挙げられる。また、「日替わりセール」「月替わりセール」「Kindleセレクト」など、セールやリコメンドの更新も頻繁に行われている。
Kindle無料アプリ
Amazon Kindle端末を持っていなくても、スマートフォン、タブレット、PCなどでコンテンツを利用できるように提供されているアプリケーションが「Kindle無料アプリ」である。2009年3月にiOS版がリリースされ(日本向けは2012年10月)、以降「Kindle for PC」「Kindle for Mac」「Kindle Cloud Reader」が公開されている。
日本の電子書籍業界とKindle
Kindleの電子書籍サービスが日本で開始されたのは、上述のとおり2012年10月である。サービス開始前から「電子書籍界の黒船」などと呼ばれ、注目が高まっていた。
それまでの日本の出版業界では、電子書籍の普及がなかなか本格化に至らず、1999年の電子書籍コンソーシアムの設立や、2004年のSONYの電子書籍専用端末「LIBRIe」発売など、“今年こそ‘電子書籍元年’”と期待できるきっかけが何度かありながら不発に終わっていた。2010年にはSHARPとSONYからそれぞれ新しい読書端末が、Appleからはタブレット端末「iPad」が発売されたことや、複数の電子書籍ストアがオープンしたことから、一部のメディアではこの年こそ電子書籍元年であると位置づけている。しかし、2012年にKindleが参入したことによって、電子書店間の競争が激化し市場の厚みが増し、日本に電子書籍の本格的な普及期がもたらされたと言える。
日本でオープンした当初のKindleストアは、タイトル数は約5万点、コミックや青空文庫からの作品を除いた一般書籍は約2万5千点にとどまり、ほかの電子書店と比較して、大きく差があったわけではない。またコンテンツの価格についても、再販制に配慮した結果ほかの電子書店との横並びになり、価格破壊を引き起こすことにもならなかった。
だが、端末としてのKindleのきわめて高い競争力と、アプリなどのサービスの展開力、ネット販売業者としてのAmazonの知名度などが、その後の販売力を強めることに貢献し、Kindleストアは大きく成長している。新しい端末の開発と販売に加え、KDPや、定額読み放題サービス「Kindle Unlimited」などの革新的なサービスを次々に展開。日本の電子書籍業界に、常に刺激を与え続けている。