ボーンデジタルとは
制作された時点で電子媒体での利用を前提としたデジタルフォーマットとなっているコンテンツ、あるいはそのコンテンツの制作フローをいう。電子出版関連では、紙の底本がなくデジタルオリジナルとして制作された電子書籍コンテンツや、その制作フローを指して使われる。類似の言葉としては、印刷物の二次的生成物としてデジタル化を行うのではなく、デジタルコンテンツでの制作・発行がまず行われ、その後にこのデジタルコンテンツを元に印刷媒体を制作・発行する「デジタル・ファースト」という言葉も使われる。
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電子出版関連でのボーンデジタルでは、現状以下の2種類に大きく分けることができると思われる。
・紙の図書では実現できない、デジタルならではの表現(動画・音声などのマルチメディア性、インタラクティブ性等)を特徴とするためデジタルの形態としたもの
・セルフパブリッシングやマイクロコンテンツなど、制作や流通上のメリットを活かすためにデジタルの形態としたもの
前者の例としては、1990年代に登場したマルチメディアCD-ROMなどが端緒として挙げられる。電子書籍書店によって各閲覧環境での機能的なサポートが必ずしも揃ってはいないこともあり、スマートフォン/タブレット端末向けのネイティブアプリとして制作、発行される場合が多い。
後者の例としては、Webで公開されている記事を再構成して電子書籍化するケースや、電子書籍書店が用意したプラットフォームで自主出版としてデジタルで制作、発行されるケースなどがある(例:Amazon KDP 、楽天kobo ライティングライフなど)。コミックなどでは、Web/アプリでのオリジナル作品としてヒットすることで、紙媒体他のメディアに展開される例も増えてきている(例:「「SPYxFAMILY」(少年ジャンプ+掲載)に注目~ボーンデジタルの大ヒットアニメとなるか?~ | Frontier Eyes Online by フロンティア・マネジメント」)。
また、デジタルコンテンツのみでの発行ではなく、当初から紙とデジタルそれぞれの特徴を活かした商品として企画される例も出てきている。2015年に話題となった、村上春樹の『村上さんのところ』は、期間限定のWebサイトを元に制作され、紙版と電子版の同時発売であったが、紙版がセレクトされた内容であるのに対し、電子版をコンプリート版と位置づけ、サイト上の連載すべてが収録されていることを特徴とした電子書籍オリジナル商品となっている。
ボーンデジタルでの「デジタル」は、必ずしも狭い意味での電子書籍フォーマットのみではなく、Web、アプリ等、様々に考えられることから、作品形態がボーダーレス化していくと見ることもできるが、電子出版という点では、むしろ従来の紙媒体のレプリカに留まらない新たな可能性を拓いていくものと言えるであろう。
[内容改訂 20220518]