OPDSとは
OPDS(The Open Publication Distribution System)は、電子出版物を探しやすくするためのオープンな形式のカタログ配信フォーマット。ブログやニュースサイトで更新情報の配信に利用されるRSSに似たAtomフィードで、電子出版物のタイトル、著者、サマリー、価格などの書誌情報の配信や取得が容易になる。新刊情報などのカタログ(目録)を広く流通させることが出来るため、販売促進やプロモーションに利用できる。
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従来はユーザーが電子書籍を探す場合、電子書籍ストアや電子図書館などのライブラリーサイトに訪れ、読みたい本を検索して探す必要があった。読みたい本がない場合は、他のストアを訪問して検索するといった手間が必要だったが、ストアやライブラリーがOPDSに対応することで出版物の集約(aggregation)、配信(distribution)、発見(discovery)、 取得(acquisition)が可能となり、ユーザーはプラットフォームに依存せずに、世界中のストアやライブラリーから自分が読みたい電子書籍を手軽に検索、発見、取得し、電子書籍にアクセスすることができる。
ブログの更新情報をRSSで配信し、RSSリーダーでこれを取得して購読する仕組みと同様に、電子書籍ストアは、書誌情報などのメタデータをOPDS形式で配信する。ユーザーは、OPDSリーダーを利用してこのフィードを受け取り、世界中の電子書籍情報から読書したい書籍を探し出すことができる。
OPDSの仕組み
OPDSの仕様は、Internet Archive、O’Reilly Media、Feedbooks、OLPC(One Laptop per Child)などの非公式グループにより策定され、現在のバージョンはOPDS Catalog 1.2であり、バージョン2.0のドラフトも公開されている。
OPDSカタログはAtomとHTTPをベースとするフォーマットで、フィードと呼ばれる出版物の関連情報を記述したXMLベースの文書フォーマット。OPDSカタログは1つ以上のAtomフィードのセットであり、AtomフィードはAtomエントリの一覧である。
OPDSのフィードには、2種類のフィードがある。カタログをブラウジングするために階層をつくるナビゲーションフィードと、出版物を一覧して取得可能にする取得フィードである。ナビゲーションフィードは、他のナビゲーションフィード、取得フィード、またはその他のリソースへのリンクである。取得フィードにあるそれぞれのAtomエントリーには、その出版物のメタデータ、フォーマット、入手方法が含まれる。
有志による仕様書の日本語訳(バージョン1.1)は、以下で公開されている。
・Open Publication Distribution System (OPDS) カタログフォーマット ver.1.1 仕様書(日本語訳)
・OPDS 入門(OPDS Primer)
課 題
利用には電子書籍ビューアーなどのアプリやサービスがOPDSに対応する必要がある。しかし、一般的に電子書籍ストアやライブラリーは、専用ビューアーを利用した垂直統合型のサービスモデルであり、個々にユーザーの囲い込みを行っている。新刊情報、売れ筋ランキングなどの販売情報は、専用アプリ内で通知したり、メルマガといった手段で読者に直接届けられることが多い。また、広くプロモーションを行うにはTwitterやFacebook、TikTokなどのSNSも積極的に利用されている。このような中で、日本ではOPDSの普及がなかなか進まず、今後の普及啓蒙活動が望まれる。
OPDSに対応したアプリやサービスの状況は、MobileRead Forumsが運営する以下の情報サイトで公開されている。
https://wiki.mobileread.com/wiki/OPDS#Online_OPDS_Catalogs
OPDSを採用したサービス
日本では、達人出版会、O’Reilly Japan、青空文庫、技術評論社などがいち早く採用した。しかし、現在(2022年5月時点)は達人出版会(O’Reilly Japan)のみリストアップされている。その他、英語16サイト、他の言語ではスペイン語、フランス語、ロシア語など約50のサイトがOPDSフィードにより書誌情報などを配信している。
[柳 明生 イースト株式会社 20151013]
[内容改訂 20220501]