オーサリング(authoring)とは
特定のフォーマットに準拠したコンテンツを作成すること。テキスト、画像、音声、動画などの複数の素材データをまとめて、コンピューター、専用の情報端末、モバイル端末、またはウェブ上で利用できるようにすることを指す。コンテンツを閲覧・鑑賞・検索できるソフトウェアと組み合わせ、単体のパッケージ製品をつくることも含まれる。容量圧縮や暗号化を伴う場合もある。ビルド(アップ)、ジェネレートなどともいう。
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「オーサリング」と言う場合、ゲームやDVDソフトの作成も含めることがあるが、ここでは電子書籍、デジタル教材、電子辞書、レファレンス系データベースを対象にしたものを扱う。
詳 細
オーサリング処理を実行するプログラム(群)は、「オーサリングツール」「ジェネレーター」などと呼ばれ、その電子書籍・電子辞書フォーマットを策定した者によって用意されることが一般的である。原則としてオーサリングを実行する者に対して、プログラミングに関する知識を要求することはない。
手順としては、《フォーマット仕様書》に沿って各種素材データを加工・準備し、《オーサリングツール》によってコンテンツを生成し、《専用ビューワー》で検証・デバッグした後、リリースする、というのが基本的な流れとなる。
オーサリングツールの主な機能は以下の通りである。
イ.素材データの形式、および素材ファイル群のフォルダ配置チェック
ロ.オーサリング設計書(書誌事項や各種設定を指定する)のチェックと適用
ハ.各素材データの相互関係を参照しながらのコンテンツ生成
ニ.検索用データの抽出とインデキシング
ホ.上記生成物のパッケージング、容量圧縮、暗号化
EPUB
現時点で電子出版分野で最も広く活用されているオーサリングツール(システム)はEPUBのそれであろう。有名なものをいくつか挙げておく。
FUSEe:http://fusee.jp/
Sigil:https://code.google.com/p/sigil/
でんでんコンバーター:http://conv.denshochan.com/
Romancer:https://romancer.voyager.co.jp/
EPUBの作成(=オーサリング)手順は基本的に以下の通りである。
イ.作業フォルダの作成
ロ.本体テキスト文書、ナビゲーション文書、タイトルページの作成(素材の準備)
ハ.パッケージ文書の作成(オーサリング設計書/指示書の作成)
ニ.EPUBコンテナの作成(オーサリング)
ホ.EPUBの検証
注意点
EPUB作成ツールのように、一般に公開され多くのユーザーに利用されるものはバグ対応・ブラッシュアップが進み、随時使い勝手が上がっていく。一方で、利用者が限定される業務用ツールの場合には、メインとなるフォーマットやアプリケーション(ビューワー)の仕様変更・デバッグ等が各種ツール類に反映されるのが遅れ、開発元以外の制作現場で混乱を引き起こすことがしばしばある。
オーサリング素材の事前チェック、オーサリング成果物の検証環境とのスムーズな連携もまた重要である。より使いやすいオーサリング環境のためには、仕様設計者、システム開発者、コンテンツ制作者(=オーサリングツール利用者)の間での、情報共有と迅速な対応が不可欠である。使いやすいオーサリング環境は、製作コストを下げ、対応コンテンツを増やし、良質なタイトルを生み出すことになる。
[永田 健児/株式会社ディジタルアシスト/20150713]