2024年9月4日 第2回JEPA技術展を開催。『AI時代における出版技術』をはじめ、出版技術からデータ管理までさまざまな内容を展示。藤井太洋氏のキーノートスピーチも実施

第2回JEPA技術展

一般社団法人日本電子出版協会(JEPA)は、9月4日に新宿区神楽坂の研究社英語センターにて、第2回JEPA技術展を開催しました。

当日は、電子出版関係者が約100名の来場し、各社のブースやプレゼンテーションを熱心に観覧されていました。各社の展示等の内容は、下記をご覧下さい。プレゼンテーションの動画も収録してあります。またSF作家の藤井太洋さんがキーノートスピーチとして「生成AI時代の出版」について具体的な活用事例やツールを含めて講演いただきました。

出展社紹介 インタビュー/プレゼン動画

特定非営利活動法人HON.jp

――事業内容について教えて下さい。

一言でいうと『本(HON)のつくり手をエンパワーメントする』というビジョンで活動している非営利団体です。
活動としては、メディア事業として『HON.jp News Blog』というウェブメディアを運営して、本のつくり手に向けたさまざまな情報を提供しています。
2つめはイベント事業です。『NovelJam』という著者と編集者とデザイナーが一箇所に集まって三日くらい缶詰になり小説を一から書いて編集して表紙を付けて本にして売る、というところまでを電子出版でやるというイベントを開催しています。あとは、『HON-CF(ホンカンファ)』というオープンカンファレンスを開催して、デジタル・パブリッシングの可能性や課題について議論したりしています。
3つめが出版事業で、毎週発行しているメールマガジンを1年間分まとめて『出版ニュースまとめ&コラム』という本にしてPODと電子書籍で販売をしております。

――HON-CF(ホンカンファ)にはどのような方の参加を待っていますか。

イベントの内容が多岐にわたっているので大テーマである『ことばの表現と流通の課題』ということでデジタルパブリッシングのカンファレンスと銘打っています、『書き手』、ライターだったり作家だったり、となにか作品を書く人、フィクション・ノンフィクションにかかわらず、あるいは編集者の方、デザイナーの方、イラストレーターの方、あとは出版流通に関わってくる書店の方とか関係者の方、本を作ってる方全般が興味を持っていただいたセッションに参加に参加していただけたらなと思っています。

――今回の出展での御社のイチオシポイントを教えて下さい。

HON.jp Booksについては一時期NFTが非常に話題になりましたが、その割に今は全然大した事ないみたいな話になっていますが、実はブロックチェーンの技術を使ってデジタルデータをまるで物みたいに扱うことのできる技術を、僕らのような零細な出版社でも使うことができる状況になっています。でもそれ自体がまだあまり知られていないのかなと。ぜひ一回使ってみてどんな感じか体験してみてほしいなと思っています。

HON.jp 鷹野さま
HON.jp ブース

プレゼン動画:HON.jp・直営オンラインショップ「HON.jp Books」他の紹介

日販テクシード株式会社

――事業内容について教えて下さい。

取次である日販のグループ会社でございまして、日販の中のシステム管理と出版社様向けサービスの2つが主なビジネスとなります。
今回ご紹介するのは販売価格や原価管理など販売から一元管理できる出版管理システム『CONTEO』になります。

――『CONTEO』は特にどのような会社に利用してほしいと考えていますか。

特に出版社様にご利用いただきたいと考えております。取次や直販、小売のお客様に対して本の販売・返品、印税のお支払いなどが一括で管理できますので、そういった業務を行っている出版社様に対してぜひお力になれればと思っています。

――今回の出展での御社のイチオシポイントを教えて下さい。

出版社様は紙の本だけでなく電子書籍や版権(IP)、グッズなど様々なコンテンツを販売されていらっしゃるかと思います。その管理をCONTEOで一元管理できる、まずここを一つのポイントとさせていただきます。
もう一つは、電子書籍のように電子書店や取次によって様々なフォーマットで売上報告をいただくような場合でもCONTEOでは簡単にデータが取り込めるシステムになっておりますので、業務効率化のお手伝いができるのではと思っています。

日販テクシード(インタビュー)
日販テクシード(ブース)

プレゼン動画:日販テクシード・出版業・コンテンツビジネス業管理システム『CONTEO』の紹介

日外アソシエーツ株式会社

――事業内容について教えて下さい。

書籍、電子書籍、目に見えない所でのデータ利用などワン・ソース マルチ・ユースを目指して、データ作りに励んでいます。

――デジタル化にあたって大変だったことや苦労したことはなんでしょうか。

「倦まず撓まず」の価値感を共有できる社員を集めることでしょうか。

――今後はどのような資料をデジタル化する予定なのか差し支えなければ教えて下さい。

いま残さなくては失われる資料のデジタル化です。

――今回の出展での御社のイチオシポイントを教えて下さい。

イチオシというよりも、わたしどものデータを活かす技術をお持ちの会社さんとの出会いを求めております。

日外アソシエーツ(プレゼン)
日外アソシエーツ(ブース)

株式会社イワタ

――事業内容について教えて下さい。

フォントの開発と販売事業をしております。1920年に岩田活版母型製造所として創業し、活字の母型を作ることから事業が始まりました。現在は『フォント』の文字デザイン、プログラム開発、販売に至るまでの一連の業務を行っています。

――『横太明朝体オールド』や『ミンゴ』はデジタル媒体での読みやすさを意識されているとのことですが、具体的にはどのような点がデジタルでの読みやすさに繋がっているのでしょうか。

読みやすいと言われている明朝体は、横線が細く縦線が太いという非常に繊細なデザインで、これが読みやすさにつながっています。しかしこれをディスプレイ上で見ると、光源が後ろにあるため、あまりにも細い線は飛んでしまい、読み辛くなってしまうことがあるので、線の太さに配慮しています。
もう一つは文字の空間部分にも均等に見えるように配慮しています。
従来の書籍は縦組みがほとんどでしたので、通常の明朝体は縦組みを意識したデザインになっています。しかし、デジタルでは横組みがほとんどです。従来の明朝体で横組みをすると、漢字とひらがな・カタカナの並びにデコボコ感を感じてしまい、行間にジャギーを感じてしまうことがあります。
これが読み辛さにつながってしまうので、かなのデザインを工夫して、漢字の高さとのバランスを整え、きれいにラインが揃うようにデザインしています。それがディスプレイにも配慮した書体の基本的な考え方になります。

――『動画フォント』や『バリアブルフォント』はどのような使い方を想定しているのでしょうか。またどのような層に活用して欲しいと考えているのでしょうか。

バリアブルフォントはユーザーが文字の太さを自由に変えられるフォントです。
通常のフォントは、固定した太さの文字デザインでつくられています。違う太さが必要になった際は、別のフォントを選択しなければなりません。
バリアブルフォントは、あらゆる太さを1フォントにまとめ、組版ソフトに表示される太さを変えるスライドバーを動かすことによって、文字の太さをシームレスに変えることができます。その機能を活用することで、デザイナーの太さや細さに対する繊細な要求に上手く対応することが可能になります。
またWEBでの活用方法としては、ブラウザ上に太さを自由に変えられるスライドバーをつけることにより、閲覧者にとって最適な見え方を自由に選ぶことができるようになります。
我々は『フォントはユーザーインターフェイス』という捉え方をしているのですが、その部分において自由に太さを変えられるメリットというのはあると考えております。
動画フォントは、文字の代わりに動画を発生させることができるフォントです。
通常のフォントは、グリフの部分、つまり文字が存在する部分にはアウトラインデータが入っていますが、動画フォントではこの部分にSVGと呼ばれる動画データを埋め込んでいます。そうすると文字コードによる指定で、通常ではアウトラインの文字が現れるところにSVGの動画が動き出すということが実現できるわけです。
現在のTVやデジタルサイネージの天気予報などでは、天気マークの部分に動画データを配置し点滅させたりしています。動画フォントでは、その部分をフォントで対応できるので使い勝手が良くなります。
また、別の側面ではウェブアクセシビリティにも対応できます。動画フォントは文字コードで動画を発生させますので、読み上げ機能にも対応できます。例えば「あ」の文字コード部分に、文字が飛び跳ねるような動画「あ」を収容して入れば、文字は動いているけれども、「あ」と読み上げることも実現できるのです。
この動画フォントは、デジタルサイネージや、デジタル教科書で漢字の書き順などを動画で表現するようなコンテンツに採用されることを想像しています。
情報をより伝わりやすくするために、固定化された文字の代わりに『動画』を使うことで、もっと扱いやすくて面白いコンテンツが生まれることを期待しています。

――今回の出展での御社のイチオシポイントを教えて下さい。

フォントデザインと技術を見ていただきたいなと思っています。
文字は空気のような存在で必ず毎日皆さん目にしているものですが、それぞれ色々なデザインや特徴を持っています。ぜひお客様の目で選び、さまざまなコンテンツに活用いただきたいと思っています。

イワタ(インタビュー)
イワタ(ブース)

プレゼン動画:イワタ・デジタルデバイスに最適化したフォントの紹介

コスモピア株式会社

――事業内容について教えて下さい。

2002年創業の語学系出版社で、隔月で発刊している『多聴多読magazine』のほか、語学書を定期的に出版しています。
2017年にe-stationという本の読み放題サービスを開始、今年で7年目になります。
出版業とe-ラーニングサービス、そして今年から生成AI研究室と続け社内の生成AI活用について研究したり、これからの出版業界内で生成AIの活用が広がるような取り組みをしていこうと考えております。

――語学出版社ならではの視点やポイントなどを教えて下さい。

弊社の語学出版は英語を中心に行っているのですが、その中で生成AIの活用となるとやはり英文の翻訳であったり、翻訳だけでなく英文を作ったりといったところでの活用が考えられます。また従来の学習方法の理論に生成AIを活用するとどの様に勉強ができるのか、といった書籍も出しております。
また先ほど紹介したe-stationで音声の配信をしているのですが、AIを使った英語の合成音声も配信しております。
弊社の専門分野と生成AIを掛け合わせて読者が望んでいる価値を届ける、そういった製品を出しております。

――苦労したこと・面白かったことなどあれば教えて下さい。

(生成AIが)出始めた頃は出力が安定せず、プロンプトエンジニアリング、つまりどういう事をプロンプトに書き込めば安定した結果が得られるかというところに苦労してきました。最近はルールも分かってきたり生成AI自体の性能も上がってきたりで大分そういった問題は減ってきたなという印象です。
また生成AIの性能が上がってきたので、どこまでできるのかという検証や検証した上で弊社の事業にどう活かすのか、本のテーマとしてもそうですし、当然業務の自動化などにも活かして行けるように今後考えていければと思っています。

――今回の出展での御社のイチオシポイントを教えて下さい。

今回はJEPAでの出展、つまり出版社向けへのアピールということでAI研究室を立ち上げまして、代表の佐野正博先生もいらっしゃっています。ぜひその場でお話など聞いていただければと思います。今年の三月まで明治大学の経営学部で教鞭をとられておりまして、転官されてコスモピアにいらっしゃったという方です。

コスモピア(インタビュー)
コスモピア(ブース)

プレゼン動画:コスモピア・コスモピア生成AI研究室他の紹介

株式会社 光和コンピューター

――事業内容について教えて下さい。

出版社向け事業と書店向け事業の2つに分かれておりまして、出版社向けの部門としては出版ERPシステムの販売をしております。
今回ご紹介する『PUBNAVI』というシステムは電子書籍の売上・印税を管理するシステムで電子書籍の売上取り込みから印税計算、支払いまで出来るシステムとなっております。

――電子書籍売上印税管理システム「PUBNAVI」は従来の印税管理に比べ、どのような点が電子書籍向けになっているのでしょうか。

電子書籍には電子書籍書店と取次があり、各書店によってバラバラの売上フォーマットで報告が来ます。
紙の本では例えば発行印税では「◯部」という数字がただ来るだけなので特に難しいことはないのですが、(電子では)印税率や印税額、商品名など細かい内容の売上報告が来ます。そういった報告が各書店や取次でバラバラなので自社のシステムに取り込むために加工する作業が発生するのですが、PUBNAVIでは約73パターンの売上フォーマットを既に搭載しているので、データを指定するだけで加工することなくPUBNAVI上に取り込むことが出来ます。
取り込んだ情報については売上分析機能を使用して分析することも出来ますし、印税契約もマスター管理しておりますので印税計算も自動で行うことが可能です。
売上や印税を担当する方の負担を大分解消できるかと思います。
2022年6月にリリースしまして、今は45社の導入実績と引き合いが150社ほどといった状況です。

――今回の出展での御社のイチオシポイントを教えて下さい。

売上の取り込みから印税計算、支払通知書の送付まで一連の作業がスムーズに行えるところをご覧いただければと思っております。
視覚的に分かり易いUIとなっておりますので、その点もご注目下さい。

光和コンピューター(インタビュー)
光和コンピューター(ブース)

プレゼン動画:光和コンピューター・電子書籍売上印税管理システム PUBNAVIの紹介