キーパーソン・メッセージ

2020.10.01

ある電子出版事業の追憶のために

三省堂  神藤 利章

 弊社のオンライン辞書検索サービス『三省堂 Web Dictionary』は、多くのご利用者の皆様から惜しまれつつも、2001年1月12日のサービス開始から20年目を迎えた今年の9月30日をもちましてサービスを終了した。サービス終了にあたり、企画構想の段階から本事業に携わってきた私にはしみじみと思うところはいろいろあったが、多くは語らないでいた。ただ、始まりの頃の出来事は結構華やかな印象として鮮明に残っているので、その辺りの話をすることとしたい。

 話はミレニアム・イヤーに遡る。すでに出版社以外の事業者によるWeb辞書検索の有料サービスがいくつも展開されていて、弊社もそちらに向けて辞書コンテンツを提供していたが、初めて出版社が立ちあげることになる本格的なサービスの企画構想についての検討を始めたのは桜の季節であった。初夏の頃には、要件概要についてSIerを担っていただくことになるイースト様と検討を重ね、要件定義を策定し、提示されていた見積もりにも合意でき、夏の終わりの頃から開発を始めた。

2020.09.01

コンテンツ産業の変革

パピレス  天谷 幹夫

 過去のキーパーソンのメッセージに目を通してみましたら、私がこの原稿を書くのも2001年から初めて都合6回目になります。今までの書込みを見ると、コンテンツに関することが、ほとんどでした。もともと、2006年7月の「次世代のコンテンツを作ろう」で、「今後10年以内に紙に代わるニューブックが一般に普及する可能性が高いことが予測されます。」と言っていて、2013年2月の「新しき器には新しきコンテンツを」で、「昨今のスマフォやタブレットへの普及がまさしくそれに当たると思います。」と言っています。それで、2015年5月には、「次世代コンテンツの萌芽」で、「50年で入れ替わる歴史に習うならば、1995年頃始まったインターネットメディアが紙のメディアを席巻するのにあと20年は必要でしょう。」すなわち2035年には、次世代コンテンツの時代だと述べています。自分でも何故ここまで新しきコンテンツにこだわるのかと不思議になるくらいですが、良く考えてみるとそれだけ危機感が強いのだと思います。

 1450年のグーテンベルグの活版印刷発明以来、紙というメディアに裏付けられた出版産業は、570年間営まれてきましたが、今となっては、紙に代わるスマフォなど新しいインターネットメディアの時代に置き換わりつつあることは、誰も否定できないでしょう。ただ、過去の歴史を見ると、その変革の時代のさなかにいる人たちには、なかなかその変革に気付かないのが実情です。後になって、歴史学者が勉強し定義づけるのがお決まりのパターンです。それで、私が恐れるのは、我々出版産業に携わる者が気付かない、あるいは気付いているが、あえて見ようとしないコンテンツの変革が、すでに起こっているのではないかということです。

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