Vol.57



JEPAキーパーソンズ・メッセージ!

業界を代表するJEPA理事の皆様から旬のメッセージをいただいておりましたこの
コーナーは、順番が一巡したため42号にて終了致しましたが、再開のご要望が多く
第45号から再びお届けしています。

ブロードバンド時代の電子書籍


日本電気(株) NECソリューションズ 市場開発推進本部
ブロードバンド&モバイル事業開発グループ
JEPA理事 田中 英俊


 インターネットの普及に伴い、電子書籍はどのように変化していくのだろうか?多くの
方がいろんな分析をしていると思うが、私なりの分析と電子書籍普及のための方法を書い
てみたい。

 私の子供達は、皆本好きである。ジャンルは偏っているようであるが、良く読んでいる。
近くに充実した書店が無いのが不満のタネらしい。また、家のパソコンとインターネット
もオープンにしているので、ネットサーフィン、ネットコミュニティ、ネットオークション
などを楽しんでおり、調べものや材料探しはネットでやると決めているようだ。しかし、
ネットで音楽CDや本は購入したことはあっても、電子書籍をダウンロードした気配はない。
そもそもそういうサービスを知らないのかもしれない。どうすれば「この本300円なんだ
けどダウンロードしていい?」と言ってくれるようになるのだろうか?

 本はデジタルコンテンツと比較すると表示品質と携帯性に優れている。また財産的な
価値観が強く残っていて、商品の再利用性も高い。中古市場もある。音楽がレコードから
CDに移行したとき、レコードもCDも共に再生機器が必要という条件で、CDの方が音質、
携帯性に勝るとなれば、CDに移行するのは当然の流れであるが、本の場合は再生機器不要
で、携帯性があり、品質も高いとなれば、なかなかデジタルへの移行の流れが作りづらい。
 
 一方、電子書籍を誰に売るのかということを考えてみると、本を買わない人は、本の
コンテンツそのものに興味が無い人なのでまず買わない。現在、本を買ってくれている人
に、「本の代わりに電子書籍を買いませんか」と言っても、その前に「その本はもう売っ
てませんよ。だから」か「本屋で注文しても2〜3日かかりますよ。だから」と言わない
と、どうも説得力に欠ける。前者は、需要と供給の問題なのでどうしてもニッチ市場向け
になる。後者は「じゃあ、2〜3日待つよ」と言われればそれまでだ。本の情報は手に
入るかどうかが問題で、そんなに急がないものが多い。本のコンテンツは、デジタル化の
魅力はアピールできるが、デジタルである必要性は訴求しづらいということかもしれない。

 では、電子書籍の爆発的な普及は望めないのだろうか?電子書籍の商品価値を変える
ことができれば、「みんなが知っている商品」に変身することができると思う。一見無駄
のように思えるが、「本を買った人に同じ内容の電子書籍も与える」が意外に理にかなっ
ている。いろんな問題をクリアしなければいけないだろうが、本を買って読んでデジタル
データで保管する、という読書スタイルが定着しないものだろうか。音楽CDとは違った、
本の持つ時系列的な価値の変化(購入して読む時の価値と、保管の価値)を使い分ける
ことができるようになる。以前は、PCとインターネットの普及率が低く、表示デバイスが
未熟などの要因で、電子書籍はこれから花開く市場という捉え方だったかもしれないが、
これらの要因は徐々に解決されつつある。環境が変わる時には売り方も変わる。その両方
がそろった時にブレイクポイントが来るのではなかろうか。特にブロードバンドの普及が
そのトリガーになるのは間違いないだろう。
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今月の調査報告

【日 本】

書籍・雑誌推定販売額 2002年2月期 前年同期比0.1%増 4ケ月連続で前年並み

書籍が同1.3%減、雑誌は同1.2%増。雑誌の内訳は、月刊誌が同1.3%増、 週刊誌が同1.1%増。返品率は、書籍が同1.2ポイント減の35.0%、雑誌は 同0.3ポイント増の28.6%。 ((社)全国出版協会 出版科学研究所発行 出版月報2002年3月号) 

NTTドコモ 携帯、PDAに小説配信 モニター実験で出版社22社が参加

NTTドコモ 携帯、PDAに小説配信 モニター実験で出版社22社が参加 今秋をメドに「FOMA」とPHSを利用した書籍配信サービスを開始する。 4月から行うモニター実験で約100点のコンテンツを搭載する。 (2002.4.4 新文化)

大日本印刷 ネットを利用して雑誌を自動的に編集するシステム開発

公募ガイドと共同で、4月からサービスを開始する。ネットに接続できる パソコン上であれば、場所や時間を問わずに編集作業ができる。 (2002.3.12 日経産業新聞)

ブッキングの「復刊ドットコム」 2000年6月開始以降、累計投票数は10万票突破

リクエストが100票を越えた時点で出版社に復刊を要望する企画で、 該当書籍は7,000点以上、復刊を実現したのは50点。最大発行部数を 記録したのは「かくれちゃったのだあれだ」(白泉社)の2,000部。  (2002.3.21 新文化)

ソフトバンクパブリッシング 書店向け注文サイト「バンクさん.net」開設

注文、販売データを営業の効率化と注文獲得に活用する。注文1,000円分、 又はログインするだけで1ポイントをつけ、450ポイントで当該書店に景品を プレゼントする。  http://www.banksan.net/ (2002.3.21 新文化)

紀伊国屋書店 通販サイトの検索機能を大幅に拡充 全店の在庫情報を一括検索

書名の一部やキーワードなどによる複合検索も可能で、店内の置き場所も表示する。 (2002.3.12 日経流通新聞)

ブックサービス 配達・代引手数料を380円から210円に値下げ 業界で最安値に

(2002.3.28 新文化)

「古本市場」を展開のテイツー フランチャイズチェーン加盟店募集を開始

今までは直営店と法人との業務提携による出店のみだったが、FC方式導入で 全国規模での出店を加速する。  (2002.3.12 日経流通新聞)

トーハンの「売場活性化プラン」 30坪級書店で成果 雑誌増売で在庫も圧縮

導入した約80%の書店が経営効率と売上高で効果ありと回答。 雑誌、書籍合計で在庫3.0%を圧縮した。  (2002.3.28 新文化)

日本製紙 雑誌の専用紙「ハイブローマット」開発 文字・写真を見やすく

仕上がりを左右する光沢調整のため、紙に塗る顔料を改良した。 写真中心のページなどで印刷用紙を選択する必要がなくなりコスト低減ができる、 雑誌本文の専用紙は業界初。  (2002.4.3 日経産業新聞)

書店売上ランキング 2001年度 1位は文教堂、2位は紀伊国屋書店

昨年1月から12月までの売上スリップを集計したが、スリップ枚数は前年比4.4%減。 3位は宮脇書店で、昨年比、上位6位までの順位に変動はなかった。 日本文芸社調査 (2002.3.28 新文化)

祝日の雑誌・書籍販売を6割の書店が支持

売上が普段の休日に比べ、「良い」とした書店が63%、来客数でも62%が 「多い」と回答した。 取協の書店アンケート (2002.3.21 新文化)

国民の3人に2人が「IT」を使用 家族や友人とのコミュニケーションが増加した

「IT」の定義は、PCや携帯電話からインターネットを利用することや、 携帯電話で通話すること。 内閣府「平成13年度ITによる家族への影響実態調査」  (2002.4.9 Internet Watch)

DSL加入者数 2002年2月末 200万件突破 5ケ月で3倍に

総務省調査 (2002.3.13 Internet Watch)

電子認証市場 2006年度には420億円に 2001年度は62億円

ネット上で高額商品の売買契約を交わしたり、各種証明書を取得するには 本人確認のための電子認証が欠かせない。 総務省予測 (2002.4.3 日本経済新聞)

ビジネスマンはメール漬け 返信文作成などに1日4時間以上を費やす

受信メール数は1日平均61.5通。帰宅後や休日にも8割近くが自宅でメール処理。 ガートナージャパン調査  (2002.3.28 日経産業新聞)

デジタルテレビの累計普及台数 2007年 4,500万台に 昨年までは約100万台

2003年から始まる地上波デジタル放送で消費者の関心が高まり、 受像機の低価格化も進む。 富士キメラ総研予測  (2002.3.18 日本経済新聞)

【世 界】

インターネットトラフィック 2000年から2005年で93倍に増加

2002年には音声トラフィックを上回り、2005年には音声トラフィックの 8倍以上になる。  米IDC予測 (2002.3.19 Internet Watch)

無線LAN関連チップの出荷数 2002年 前年比75%増

  InStat予測 (2002.4.5 Internet Watch)

PDA出荷台数 2002年 前年比18%増

Gartner予測 (2002.4.5 Internet Watch)

世界中で使用されているPCの数 6億台を超えた

ComputerIndustryAlmanac調査   (2002.3.13 Internet Watch)

携帯電話の出荷台数 2001年 史上初めて減少

Gartner調査   (2002.3.13 Internet Watch)

【米 国】

インターネット利用家庭のデジカメ普及率 2001年 33%

infoTrends調査   (2002.3.28 Internet Watch)

広告支出 2002年 前年比11%増 ネット広告不況は底を打った

2001年に11%減少したインターネット広告市場支出が反発し、2002年には11%増、 2005年には135億ドルに達する。  eMarketer予測 (2002.4.5 Internet Watch)

米政府機関のWebサイト利用者は6,800万人 2年間で1.7倍に

利用者のうち、4,200万人が公共政策問題を調査、2,300万人が政策について 意見を送っている。最も人気の高いコンテンツは、観光情報や娯楽情報で、 利用者のほぼ5人に4人が利用している。   非営利調査機関の米Pew Internet & American Life Project調査   (2002.4.5 Internet Watch)

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【連載】
「電子出版のデスクトップ」


- - -第31回 最終回:「出版社は不要?」- - -


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