Vol.38


JEPAキーパーソンズ・メッセージ!

凸版印刷(株) 情報・出版事業本部 企画販促本部兼Eビジネス本部
JEPA理事 沖津 仁彦

雑感

「印刷」の発明とインターネットの出現が逆だったらどうだったか、と思う時が ある。 15世紀半ばにインターネットが出現し、500年以上にわたり人々はデジタル化さ れた情報によってのみコミュニケーションをとっていた20世紀の終わりに、突如 として「印刷」という手段により、携帯性に優れ、しかも文字の可読性と色彩の 再現性においてインターネットを凌駕する印刷メディアが発明されたとしたら、 まさに“世紀の発明”として世界を席巻したのではないか・・・。 そんな夢想をしてみたくなるほど「印刷」あるいは印刷メディアには優れた特長 があり、それがあればこそ長らく人類の情報コミュニケーションの一翼をになっ てきたといえる。 考えるに「印刷」には、人間の五感の内で視覚(文字や写真を見ること)、触覚 (指や手で感じること)、臭覚(紙やインキの臭い)に訴えられる要素を持って いる。それに対して、インターネットをはじめデジタルメディアは視覚と聴覚に 訴える。「印刷」はどこかしら人間くさいのだ。 しかしながら現在は、「デジタル社会」や「インターネット時代」になりつつあ ることも厳然とした事実であり、そこには、「印刷」に慣れ親しんだ世代とは異 なった世代が誕生しつつある。また、一方で「アナログ世代」が徐々に変わらざ るを得ない時代になりつつあるともいえる。 パソコンや携帯電話、また家庭用ゲーム機などを日々使いこなす、デジタル的と もいえるライフスタイルや感性を持った世代が、今後のマーケットにおいて重要 な位置を占めるであろうし、アナログ世代の代表格であった主婦層やシニア層に も急速に広がるとの予想は想像に難くない。 では、そのような“デジタル的な人間”の特徴は何であり、今後どのようなアプ ローチが必要となってくるのであろうか。 そのヒントのひとつとして、かつて著名なデジタルクリエーターが看破したよう に、「頭においしところ」をもってくることだ。その人は音楽業界を引き合いに 出して、ヒット曲を作る条件のひとつとして、“サビ頭”ということをあげた。 つまり、今までの「イントロ-メロディ-サビ」の構成を、「サビ-メロディ-サ ビ」にして頭においしいところをもってくること、それがないとデジタル世代に は簡単に飛ばされてしまうのだという。そして、デジタル音楽とは楽器や録音が デジタルであるということではなく、構造の変化に重要な意味があるのだとい う。なるほど、という気がする。 そのことは、他の業界、とりわけ我々が属する出版・印刷業界にも当てはまるこ とであろう。 インターネットは印刷メディアである出版物の「再生工場」ではない。もちろ ん、コンテンツの2次利用にはそれなりの意味と価値があるのだが、それだけで は“デジタル的な人間”にはソッポを向かれてしまうことになる恐れがある。 印刷会社の立場から従来、「情報加工業」を標榜してそのスキルを培ってきたつ もりであるが、今後は「印刷」という感覚に訴える世界から、デジタルな感性に 訴えるという視点でのアプローチが益々重要になってきていると感じている、今 日この頃である。 BACK

今月の調査報告

【日 本】

書籍・雑誌推定販売額 7月期 前年同月比 7.7%減

書籍は同13.0%減、雑誌は同4.5%減。雑誌は月刊誌が同4.4%減、週刊誌が同4.7% 減。当月返品率は書籍が同1.5ポイント増の43.7%、雑誌は同0.5ポイント減の29.0%。 1月〜7月の累計推定販売額は、書籍雑誌合計で同4.0%減。月を追うごとに伸び率 が低下する。 ((社)全国出版協会 出版科学研究所発行 出版月報2000年8月号)

出版大手8社の電子書籍を販売する「電子文庫パブリ」9月1日オープン

角川書店、講談社、光文社、集英社、新潮社、中央公論新社、徳間書店、文藝春秋 の各社が個々に運営している電子書籍販売サイトのタイトルを横断的に検索・購入 できる。オープン当初のタイトル数は約1,000点で、毎週金曜日に新刊を追加する。 データ形式は出版社によって異なり、角川書店、講談社、集英社、新潮社がボイジ ャーのドットブック形式、光文社と徳間書店がテキスト形式、中央公論社がPDF形式、 文藝春秋が専用ブラウザー用のCXT形式。立ち読みや印刷の可否、外字/読み仮名の 扱いなどがそれぞれ異なっている。 → http://www.paburi.com/ (2000.8.31 Internet Watch)

フジオンラインシステム ダウンロードが不要な電子出版サービス開始

インターネットを接続したままブラウザーから画面をクリックするだけで購読が 可能。決済手続きを終えた作品は、2週間以内に限り何度でも繰り返し読むことが できる。価格は1タイトル当たり300〜800円。 (2000.8.17 日経産業新聞)

三省堂書店と東京大学出版会 希少な専門書をネット販売

東大出版会が選定した約70タイトルを三省堂のサイトで受注し、宅配または首都圏 内JR駅の販売店などで引き渡す。 → http://www.sanseido.com/ (2000.9.7 日経産業新聞)

スカイソフト 海外雑誌を格安販売 送料込みでも店頭価格を3割以上下回る

http://www.skysoft.co.jp/ (2000.9.7 日経流通新聞)

中古書店「BOOKOFF」 中古書籍の大規模ECサイト「eBOOKOFF」開設

コミックから単行本まで幅広いジャンルの中古書籍を10万タイトル、50万冊を用意 し、注文書籍を即日出荷する。価格はリアル店舗の「BOOKOFF」同様、新刊定価の 半額以下の設定。書籍の買い取りサービス「ネット宅本便」も合わせて開始し、 査定額を客にメールで知らせるサービスも付加していく。「GAZOO」にも出店して 集客を図る。 → http://www.ebookoff.co.jp/ (2000.8.10 Internet Watch)

家庭用ゲームソフト販売のトップボーイ 書籍・中古CDの複合店出店加速

店名は「ブックパレット」。中古本、新刊本、中古音楽CDを同一店舗で扱う新業態 店。商品の種類を多様化することで、来客頻度、滞在時間の拡大を見込む。 (2000.8.8 日本経済新聞)

事務用品通販のアスクル 事務所向けにネットで書籍・雑誌を販売 56万点用意

合計2,500円以上の注文は配送料無料。同社は7月から図書館流通センターなどと 共同で個人向けに「bk1」を始めている。 (2000.8.8 日経産業新聞)

ビー・オー・エル スティーブン・キング氏の話題作邦訳版を先行販売

「Riding the Bullet」は11月6日から一般書店で販売される予定で、ネット販売 が約2ヶ月先行する。配送料を除く本体価格は1,000円、注文から最短2日で届く。 同作品は3月、米国で電子書籍の形態で販売、発売後48時間で50万部が購入され 世界的な話題を呼んだ。 → http://www.jp.bol.com/ (2000.8.25 日経産業新聞)

ブッキング 絶版本の復刊第1号決定 絵本「かくれっちゃったの だあれだ」

価格は2500円。同サービスは、注文が50件に達した時点で出版社と交渉をして 再出版する仕組み。6月1日の開始以降8月半ば時点で約3,900人から1,000タイ トルを超すリクエストが集まった。 → http://www.fukkan.com/ (2000.8.18 日経産業新聞)

大阪屋 ネット書店専用の物流拠点「EC受注センター」本格稼動へ

適正在庫を持ちながら行う完全単品管理とリアルタイムで提供する情報開示態勢の 構築を目指し、同社の関西ブックシティとは別に商品管理および流通を担う。 (2000.8.3 新文化)

トーハン ネット書籍通版拡充 品目4万5,000から150万に大幅増 注文も簡略化

ネット書店「e-hon(イーホン)」は、専門書中心の「本の探検隊」を改良し、 一般書も対象に加える。 → http://www.e-hon.ne.jp/ (2000.9.5 日本経済新聞)

トーハン 注文書籍配送専門の新会社「ブックライナー」設立

都内では午前11時までの注文なら即日、その他の地域では3日以内に書籍を届ける。 消費者は1冊につき50円の手数料を支払う。 (2000.8.19 日本経済新聞)

ネット利用料金 2月時点 定額制では東京はニューヨークの1.8倍

郵政省「1999年度の電気通信サービスの内外価格差調査」 (2000.8.26 朝日新聞)

ネット接続 CATV経由が急増 8月上旬 前年比7.1ポイント増の13.4%

もっとも多い「一般電話」は48.4%だが、前年同期比8.2ポイント減。 BCN総研調査 (2000.9.1 日経産業新聞)

ネット広告市場 2000年 前年比倍増の500億円前後に 年初業界予測を大幅更新

2002年中には予定より2年早く1,000億円を超える。 電通予測 (2000.8.15 日本経済新聞)

携帯情報端末市場 2004年 約400万台へ 99年は132万台

IDCジャパン予測 (2000.9.4 日経産業新聞)

PC出荷台数 2000年 前年比19%増 1,366万台の見込み

うち、個人市場向けは625万台で全体の45.7%。メーカー別シェアでは、NECが21.9% が首位、富士通が21.5%で肉薄する。 矢野経済研究所調査 (2000.8.13 PC Watch)

DVDソフト出荷額 上半期 前年同期の約4倍 363億7,000万円

半年間で99年の実績を超えた。躍進を支えているのはプレーヤーの普及。 日本映像ソフト協会調査 (2000.8.7 日本経済新聞)

ソフトウェア市場 2000年 前年比11.9%増の1兆6,880億

IDCジャパン予測 (2000.8.30 日経産業新聞)

【世 界】

オンライン広告支出が急拡大 99年の35億ドルから2005年までに165億ドルへ

ジュピター・コミュニケーションズ予測 (2000.8.21 Internet Watch)

デジカメ出荷台数 2000年 前年比113%増 1,101万台へ

日経マーケットアクセス予測 (2000.8.4 日経産業新聞)

【米 国】

アマゾンとマイクロソフト 電子ブックで提携

電子ブックは活字の読み難さが普及の大きなネックだが、マイクロソフトはこれを 解消する技術を提供、アマゾンは今年後半に電子ブックの販売に乗り出す。 (2000.8.29 日本経済新聞)

バーンズ&ノーブル Microsoft Reader用デジタル書店「eBookstore」を開店

Microsoft Readerは、Windows95以上の環境で動作し、MicrosoftやeBookstoreなど のサイトから無償でダウンロードできる。eBookstoreでは、Microsoft Readerで 読める書籍を大手出版社と協力して用意する。バーンズではMicrosoft Readerだけ でなく、Rocket eBookやGlassbook向けのデジタル書籍も扱っている。 → http://www.bn.com/ebook/ (2000.8.10 Internet Watch)

ネット広告市場 1〜3月期 前年同期比2.8倍の19億5,300万ドル

四半期で過去最高だった昨年10〜12月の実績を1割上回り、順調に拡大した。 インターネット広告協議会調査 (2000.8.10 日本経済新聞)

インターネット世帯普及率 7月時点 52% 家庭の利用者数は35%増

1カ月当たりインターネットに約10時間を費やしており、1年前に比べて26%増加。 また、1カ月に閲覧するページビュー数は、前年同期の353ページビューから 709ページビューと倍増。一方、1カ月に訪問するユニークサイト数は、1年前の 12サイトから10サイトに減少した。 Nielsen//NetRatings調査 (2000.8.21 Internet Watch)

女性インターネット利用者の増加率 第一四半期 はじめて男性を上回る

最も著しい伸びを示したのは、12〜17歳の女子利用者。 Media MetrixとJupiter Communications調査 (2000.8.11 Internet Watch) BACK

【連載】「電子出版のデスクトップ」

- - -第12回:「Sorry Japanese Only!―日本語を読みやすくする(1)」- - -


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